輝夜

kaguya


Featured in: 夢
track: 2F
arrangement: RD-Sounds
lyrics: RD-Sounds
vocals: めらみぽっぷ
original title1: 竹取飛翔 ~ Lunatic Princess
length: 05:47

◇概要

『その見目の麗しきこと。天より地に降りしものよ。月無き闇夜さえも。遍く輝らすよう――』

『夢』うつつ、Sweet Dreams側(2F)に収録。
東方永夜抄に登場した『蓬莱山輝夜』。彼女はその名前の通り、竹取物語に登場するかぐや姫がモチーフのキャラクターだ。

幻想郷には月の姫、輝夜かぐや姫が住んでいた。
千年以上もの長い間、人間に見つかる事なく隠れ住んでいた。

―『東方儚月抄 ~ Cage in Lunatic Runagate』より引用

もし、かぐや姫が月へ帰っていなかったとしたら。

もし、かぐや姫が現代でも地上に住んでいたとしたら。

そんな幻想が形となったようなキャラクター『蓬莱山輝夜』はどんな夢を見るのだろうか。

アルバム『夢』は、文字通り「夢」をテーマとした楽曲が収録されている。そして、収録された楽曲には地上7Fから地下B7Fまでの階層が割り振られ、地上階の楽曲はSweet Dreams(吉夢)、対して地下階の楽曲はBad Dreams(悪夢)とされている。

彼女の見る夢『輝夜』は地上2Fであるため吉夢という事になる。

月のお姫様であり永遠と須臾の罪人でもある彼女の境遇と辿った軌跡を頼りに、楽曲『輝夜』について思いを馳せていきたい。


◇カグヤと穢れ

この項では彼女の名前と穢れについて注目し、彼女の半生を振り返っていく。なお、儚月抄と永夜抄の設定を厳密に見比べると双方で矛盾点が見られることもあるため、話半分で読んでいただきたい。

カグヤは月の民の一族であり、月の姫として大切に育てられていた。
その為、我侭し放題に育てられていたのだ。

―『東方永夜抄』キャラ設定.txtより引用

蓬莱山輝夜が月にいた時代、彼女は「カグヤ」と名づけられていたことが東方永夜抄のキャラ設定.txtを見ると分かる。大切に育てられてきたお姫様はある時、一つの大罪を犯す。

作る事すら禁忌であった「蓬莱の薬」を教育係であった八意永琳に作らせて、その薬を自ら飲んだのだ。「蓬莱の薬」を飲むと不老不死となり、地上の人間のように穢れが生じてしまう。月の民は穢れを忌み嫌っている。

薬が飲んだことがばれてしまい彼女は処刑されてしまう。しかし、永遠の力を持っていたカグヤは処刑されたとしてもすぐに生まれ変わり次の生を得るため、事実上死ぬことはなかった。小説版儚月抄では「薬を飲んだと同時に月の都から追放された」と永琳の独白があり、処刑については触れられていない。

カグヤは罰として次の生は地上の賤しき民と暮らす様に命じられ地上に落とされた。
間も無くして、一人の地上人に発見され、そこで輝夜という名前で暮らす事となった。

―『東方永夜抄』キャラ設定.txtより引用

カグヤは上記の通り、穢れた地上へ落されることなり、「輝夜」という名前で暮らすようになる。「輝夜」という名前は地上人から名付けられたのか、或いは自ら名乗ったのかは東方の世界においては明らかになっていない。

現代の我々の世界では「三室戸斎部秋田」という氏族により「なよ竹のかぐや」と名付けられたことになっている。しかし、竹取物語の原本の存在は不明であり成立年も不明、最古の写本でも室町時代のものになるため、それが真実かどうかはかぐや姫本人のみぞ知る。

ここから竹取物語が始まり、五人の貴族から求婚と五つの難題を経て、月からの迎えが来ることとなる。しかし、東方の世界では輝夜姫は月へ戻らず、月の使者のリーダーであった八意永琳と共謀、他の月の使者をすべて殺害している。

その後、月の使者から逃れるために人里離れた山奥にて隠れて過ごすこととなる。永琳は輝夜の能力と自らの叡智を駆使し、歴史が進まない仕掛けを施した建物「永遠亭」を用意し、二人はここに住まう。すべての歴史は止まり、穢れることも朽ちることもない、永遠の空間、無論訪ねる者は誰もいなかった。因幡てゐと鈴仙、そして永夜異変の主犯達を除いて。

あの二、三年ほど前の地上の民による襲撃事件があってから、
私は永遠亭に永遠の魔法をかけるのを止めた。

―『東方儚月抄 ~ Cage in Lunatic Runagate』より引用

永夜異変後の輝夜は永遠亭にかけていた永遠の魔法を解いている。理由は「人間と妖怪が互いに協力し合う姿を見て地上の民を羨ましく思ったから」というもの。

永遠亭は地上の穢れを受け容れ、蓬莱山輝夜の歴史はふたたび動きだした。

以上が私なりに解釈した蓬莱山輝夜の半生となる。ここからは楽曲『輝夜』について触れていく。

歌詞の最後、「カグヤ」が「穢れなき名」と歌われ、「輝夜」が「穢れた名」と歌われている。前述の通り、「カグヤ」は月で名乗っていたと思わしき名前、「輝夜」は地上で名付けられた名前である。

東方の世界では誰が「輝夜」と名付けたのであろうか。自ら名乗ったのかもしれないし、斎部秋田が名付けたのかもしれない。

おぼろげにたゆたう記憶、彼女は誰に名付けられたかまでは覚えていないのかもしれない。しかし、穢れた名を名乗り、穢れた名で呼ばれるのであれば、きっとその意味だけは忘れることはないのだろう。


◇穢れと歴史、精神と記憶

地の民の魅力を目の当たりにし、自らその魔法を解いたのだ。その結果、永遠亭も地上の穢れに飲み込まれた。

食べ物は早く食べないとすぐに腐り、飼っていた生き物は皆一様に寿命を持ち、高価な壷は慎重に持ち運ばないといけなくなった。その代わりに月の都から使者に怯えて暮らす日々は、明るく楽しいものへと変化した。

―『東方儚月抄 ~ Cage in Lunatic Runagate』より引用

永遠の魔法とは、穢れを知らずに変化を拒む魔法である。上記の引用の通り、永遠の魔法を解くということは穢れが発生することになる。

この穢れ、実は物理的なものだけでなく精神にも影響を与える代物であることが伺える。この項では穢れと精神の変化について注目する。

身も心も地上に堕ちていた貴方はもう穢れている。だから貴方なら敵のところに行ける。

―『東方紺珠伝』サグメのセリフより引用

近年、鈴仙が地上の兎になったことを強調するかのような描写が増えている。綿月依姫からは「性格は臆病で自分勝手」と称され、戦争の噂を聞いただけで月から逃亡していた永夜異変の頃に比べて、かつて逃げ出した場所であった月の都に潜入し異変の主犯と勇敢に弾闘うなど、近年の鈴仙は精神的な成長を遂げていることが伺える。これも地上に落ちて穢れた影響なのだろうか。

そんな日々を経て、いつしか地上を月の都よりも魅力的な場所だと思うようになっていた。その時は永遠の魔法をかける事はなく、僅かだが地上の穢れに侵食されていた影響だと思う。

私や永琳の心境に微量な変化が見られるのも、恐らく地上の穢れの影響であろう。

―『東方儚月抄 ~ Cage in Lunatic Runagate』より引用

上記は蓬莱山輝夜による推測ではあるのだが、穢れの影響で精神に変化が生じるという考え方があるようだ。月の民にとって、穢れるということはそれだけショックの大きいイベントなのだろう。八意永琳が兎達に優しくなった事など、永琳の心境の変化についても輝夜は気に掛けているようだ。また、八意永琳自身も輝夜の暢気な性格を見て「昔はそんな事は無かった筈」と変化を感じている様子が伺える。

歴史が動き始めてしまうと、後は人間のように昔の事を懐かしく思うだけの生活となってしまう。判っていても、もう歴史が止まっていた頃の生活には戻りたくなかった。

―『東方儚月抄 ~ Cage in Lunatic Runagate』より引用

上記の引用は八意永琳による独白となる。永遠の魔法が解かれ歴史が動き出すことは、すなわち穢れるということ。穢れによる間接的な影響として「昔を懐かしく思うようになる」と月の頭脳は考えているようだ。

「昔を懐かしむ」、楽曲『輝夜』においても、蓬莱山輝夜が老夫婦を思い浮かべ懐かしむ様子が描写されている。昔を懐かしんでいるという事は既に歴史が動いている状態なのだろうか。もしかしたら楽曲『輝夜』の時系列は、永遠の魔法が解かれた永夜異変の直後のイメージなのかもしれない。

キャラ設定.txtでは鈴仙が来訪したことにより輝夜の記憶が呼び起こされる描写があるため、精神と記憶の変化は「穢れの影響」というよりは「歴史が動いたことによる影響」という解釈もあるだろうか。月の使者からの逃亡の果て、歴史の止まった永遠亭で過ごしていた間は昔の記憶を懐かしむことも思い出すこともなかったのかもしれない。


◇ブックレット

穏やかに微笑む輝夜姫と月見団子を抱えた老夫婦。これから一緒に月見をするのだろうか。イラストの端はぼんやりぼやけており夢らしさを感じる。

例月祭とは、月と地上の距離が最も近くなる満月の日に行う祭りである。この祭りでは団子など丸い物を偽の満月と見立てて、相対的に満月を遠ざける。少しでも満月を遠ざけて、月の使者がやってくる事を防ぐのである。勿論この祭り自体、私が考えて始めた物だ。

―『東方儚月抄 ~ Cage in Lunatic Runagate』より引用

上記の通り、お月見をしながら団子を食べる風習「例月祭」は八意永琳が発案したものであるらしい。夢の中で月見団子が出てきているということは、輝夜は無意識に月を遠ざけている、つまり地上で暮らす意志を暗示していると解釈できるかもしれない。

イラストは『綜纏Vol.4 四百四描』に収録。


◇雑記

でもね。永琳のこの術は完全だけど、あまり好きじゃないわ。
ここには誰も居ない。誰も訪れない。退屈過ぎて死にそうだわ。

―『東方永夜抄』輝夜のセリフより引用

歴史の進まない仕掛けについて、蓬莱山輝夜は上記のように述べている。穢れと変化を拒む永遠の魔法、地上の民と接触し共に過ごした経験のある輝夜にとっては退屈な力なのかもしれない。

『遙』収録の『devastator』では、永久に続く暇潰しと退屈、荒廃した永遠が歌われていた。「耐え切れぬ軌跡の初期化」、穢れなき永遠の持つ毒性は精神と記憶をも荒廃させてゆく。永遠の魔法を解き、穢れた名と共に歩むことを選んだ『輝夜』とは真逆に位置する楽曲とも思える。しかし、蓬莱人は永遠から逃れられぬ運命であるため、時系列を違えて両者が同一世界で成立する解釈を否定できない。

最後に夢について。

地上に落とされて老夫婦に拾われた頃を思い出す夢、すなわち過去の夢を見ること、それらが暗示するものはなんなのだろうか。

私はその手の専門家では無いため正しい夢診断ができるわけではない。

「夢は願望の充足のために見る」というフロイトの言葉を信じるのであれば「過去を取り戻したい」という願望の暗示なのか・・・?

もしかすると『輝夜』は、永遠の檻に閉じ込められた姫が見た一抹の甘い夢だったのかもしれない。

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