第18回博麗神社例大祭にて頒布された約1年ぶりの凋叶棕新譜『報』を聴きましたので感想を書きました。「それってあなたの感想ですよね?」おっしゃる通りです。感想でございます。
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本記事にはネタバレと超次元解釈と欲望が含まれておりますので閲覧の際はご注意ください。また、こちらは〈初回限定生産盤〉の感想となりますので予めご了承ください。
◇テーマ「欲望」×依神姉妹×「報い」=??
西暦2021年。世界は新型コロナウィルスの影響により自粛ムードに包まれた!
新たな時代に適用する生活様式「ニューノーマル」が掲げられ、行きつけの居酒屋は閉店し、一部同人イベントは中止となり、剛欲異聞頒布は延期に延期を重ね、オタクどもは推しのVに銭を投げ、ソシャゲに重課金をし、それでもなお個人の金融資産残高が過去最高を記録していた・・・。
前回のアルバム『蒐』より約1年。
ついに沈黙を破り、凋叶棕の新譜が発表される!
テーマは「欲望」。
タイトルは『報』!
このテーマでそのタイトルって・・・。
つまり、「欲に駆られて行動すると報いを受ける」そういう類の物語ですかー???例えばイソップ寓話の「ガチョウと黄金の卵」みたいな・・・?魔王からせかいのはんぶんをもらってしまった勇者の末路とか・・・?そういう類の物語は結構昔からありますよね。
でも、実際聞いてみると凋叶棕の中では新鮮な面白いアルバムでした。
金の箔押し!いつもよりちょっぴりお高いゴージャスなアルバムです!
しかも初回限定生産!これを逃したら二度と正規で手に入らない逸品!購買欲煽っていく感じでコンセプト通りですね?
『報』というタイトルも面白いです。単純にテーマ「欲望」なのに「報い」なのも面白いのですが、私としては「報」の漢字が依神姉妹っぽく見える点ですね!帽子被っててひらひらな「幸」が女苑、髪が長くて猫を抱いてる「𠬝」が紫苑に見えませんか?あと、文字の成り立ちも興味深くて結構物騒な象形文字から由来していたり、他にも「報」の漢字には日本円を表す「¥」が入ってたりすんですよね!故に今回の漢字選びはめちゃくちゃハマってるなー!と思うんですよ!
収録楽曲はなんだかいつもと雰囲気が違うような音楽性・・・?幻想的な音楽だけでなく、現代的な音楽もあり、いつもの凋叶棕とは違ったジャンルの楽曲がありますね。故に新鮮味があって面白いアルバムだと思います。一応真面目な楽曲もありますが、全体を通してネタ要素多めです。何せ最初がアレですからね!各方面から怒られそうな軽率さが聴く者を笑顔にしてくれるでしょう!
◇雨の日の例大祭
今回は久しぶりに例大祭に一般参加してきました!鬼形獣以来ですかね?上海アリス幻樂団の新作・東方虹龍洞の体験版が頒布されると知り、しかも今作はゲームシステムがかなり凝ってそうってことで、もうこれは足を運ぶしかない!と思って欲に駆られてまんまと参加した結果、2時間大雨の中にカッパ装備で立つことになりました!まあ雨対策はバッチリでしたし、悪天候時のイベント参加経験もあったので今回そんな大変だったわけでもないですが・・・。スタッフさんのおかげで時間通りに入場できてましたし、新作体験版も無事手に入れられたので本当にありがたい限りです・・・!
余談ですが、雨対策はカッパ、折り畳み傘、45ℓのビニール袋×複数、大きめのタオル×複数、替えの靴下、防水スマホケースでだいたいOKでした。私は今回戦利品少なめでしたが、戦利品が大量になる方は30ℓくらいの完全防水バッグが安全だと思われます。そもそもあまり戦利品を詰め込まないようにするのも対策になると思いますが、欲望に負けてしまうのがオタクのサガ・・・。
もちろん虹龍洞体験版だけでなく、凋叶棕の新譜も会場で手に入れられました!RDさんにリアルスパチャも贈れましたし、今回のイベントは大満足でした!
さて、安全な場所に避難して虹龍洞体験版も一通りプレイし終わったので、新譜開封の儀と洒落込みましょうか。
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裏面確認!
狂時計!ヨシ!(情報公開時は「計酒樓」ってなんだろう・・・と思っていた)
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外装をはがします。
帯もゴージャスでいいですね。
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ケースを開けます。
姫女苑。春紫苑。英文のテンション高すぎておハーブ(お嬢様)。
ディスクを取ると、あー・・・。
これはケースを分解してインレイとブックレットを裏返すことで紫苑仕様の装丁にできるタイプ?
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ドライブにセット。
全部で11曲!
それではLet’s GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!
◇楽曲の感想
ボーカルあり、インストありの全11曲!(たぶん)
新ジャンルへの挑戦もあり、いつもと違う新鮮さがあります。ですが、いつもの凋叶棕もあるのでご安心を。
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M01. カネと楽園とエゴイスト
出オチじゃねーか!般若心経から始まるKBSのK担当。
般若心経は煩悩解脱と命蓮寺要素なのでしょうが、いきなりお通夜ですか・・・。『遙』もいきなりお通夜でしたが・・・。知らない人がライブやカラオケで聴いたらどんな反応になるんでしょうね?
それはそれとして。ぱんちら・・・じゃなくて、いつきんぐだむの国王こと棗いつきさんですよ!甘ったるい生意気メスガキボイス!女苑のイメージ通りです。憑依華のドットからして女苑ちゃんちっちゃいのでこういうボイスのイメージがありました。いつきさんの声、いいですよね・・・好き・・・。
あと気になる点としては、音楽のジャンルが凋叶棕では珍しい今までにない感じですね?ギラギラとネオン輝くパリピっぽい感じが実に女苑に似合います。原曲のエゴイストは控えめでリリカのメロがふしぶしに感じられますね。華やかなでいいですよね、エゴイスト。
内容はもう財産を消費させる程度の能力全開って感じでストレートに女苑です。姉と比べて明るくて危険度はマシかなって思うんですけど、昨今の時世を考えると割と最悪な感じもします。まあ資本主義経済、お金は使ってなんぼですからね。宵越しの銭持たず経済回していきましょうよ。
というわけで『報』2枚目どうですか???2枚あれば女苑仕様、紫苑仕様、両方並べて飾れますよ???
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2021/03/30追記
自分から購買欲煽っていてあれですが、初回限定生産盤には数に限りがあると思うので複数買いはほどほどにした方が良いのかもしれませんね。手に渡るべき人に渡ってほしいので節度を守っていきましょう。
M02. Bloodless Gleaming
まさかの金かわ枠。善良な十六夜咲夜好きのファンは怒っていいですのよ?魔性の女に内なる暴力性を引き出されたKBSのB担当。
いや、十六夜咲夜はそういうキャラじゃないんで・・・。小槌パワーを受けた妖剣シルバーブレードの影響下ならまだしも・・・。ブラが黒なのは解釈一致ですが・・・。にしても、はなださんの描く表情が欲望塗れで素晴らしいっすね・・・。
試聴の時はロリを虐める変態咲夜さん的な何かと思っていましたが、咲マリか・・・。咲マリ、原作だと絡みも多いし仲良い方だと思いますね。魔理沙も自分から紅魔館行くし、咲夜はそんな魔理沙を匿うし、咲夜は魔法の森で迷わずに魔理沙の家に行けますし。二次創作では魔理沙をメイドにして虐める咲夜さん的なものはありましたが・・・。
まあ咲夜と金髪の子が似てるのはなんとなくわかる気がします。無宗教というか「神はいない」的なニヒリズムを二人とも持ってるようですし、お互い苦労してそうですからね・・・。危険な状況に陥ってもどちらも心は折れなさそうです。体術は咲夜>金髪の子ですし、金髪の子に勝ち目はないですが。
自分で「ナイフは血の通わない金属ですから」とは言ったものの人間に冷たすぎるだけでここまでイっちゃいますかね?十六夜咲夜はこういう行為に抵抗感はないと思うのでやろうと思えばこういうこともできるってだけでこういう欲望があるかどうかは謎です。どちらかといえば十六夜咲夜というより製作者の欲望では???
元々はといえば、金髪の子が悪いのは、それはそう。それは正論。
M03. Lovely/Easing/Wholesome/Distractive
SNTWと同じようにタイトルを略そうとしたらLEWDになる罠!『年中夢中の好奇心』というタイトルが既にいかがわしい?確かに、それはそう。
凋叶棕では珍しい感じのジャンルの音楽ですね。私は結構好きです。ポップで可愛いエレクトロミュージックがロリっぽくて妖精らしさを感じます。こういう感じの音楽は割と今トレンドなんですかね?Youtube動画のEDになんかにも良さそうだと思います。
これは誰の「欲望」なんでしょうね。妖精?いやまさか、Wholesome(=KENZEN)なのにLEWDというのは、例えば一般向けの妖精本を見ていかがわしいと思う人の欲望ですよね?え?違う?
M04. Fairy Disease
なんかラップ調でスカしたこと言ってますが、このアルバムのテーマは「欲望」です。これはいけませんね。いけませんよ。このアルバム、金!暴力!と来ましたからね。良くないですね。はい。KBSのS担当。
まさかのラップ!?これも凋叶棕には今までなかったジャンルですね。夜のネオンが鈍く光るような曲調に若干のパリピ成分を感じましたが、内容はいつもの凋叶棕でした。まあ、そのせいでラグーン語にしか聞こえなくて最初は笑いすぎて聴くどころではなかったですが・・・。真夜中の曲に、一部英単語を混ぜた詩的な独り言なので・・・。
一人称は妖精の虜になってしまった病的なモブなのでしょうけども、本人の主張は「(妖精は)艶めかしく愛らしい・・・」「その魔性で私を惑わせてくれ」「手を伸ばして触れるのはダメ」「誰にも触れてほしくない」「この思い無駄になってもいい」だと思うので、要約すると「YES!ロリータ、NO!タッチ」ってことですね???(要約しすぎ
そういえば最近の凋叶棕にもロリコンいましたよね。妖精病の人とは違う別のタイプのロリコン。ロリコンにも種類があるってことですね。あっちは対象が宵闇の妖怪、こっちは対象が光の三妖精なので、私はそれぞれ闇のロリコンと光のロリコンと呼んでいます。
M05. 夜は短し稼げよものども
何気に多い凋叶棕の『佐渡の二ッ岩』アレンジ!今回は和風インスト。欲の中で言えば、金銭欲でいいんでしょうか?
夜の里で裏の商売やっていると噂のマミゾウ親分とその部下たちの楽曲ですね。鈴奈庵でもいろいろ商売やっておりましたね。
この楽曲、凋叶棕では定番の物語性があるインストで、前半は部下の狸たちが頑張って稼いでるイメージなんですが、後半の静かに笛が鳴るところで親分登場の脳内イメージがあります。里の真ん中を堂々と歩く親分、かっこいいですよね。(幻覚)
そういえば狸たちはお金を稼いで何をしたいんでしょうね?妖怪ですから人間社会に溶け込み人を騙すことが存在の礎となっているのかもしれませんね。そう思うと「欲望」よりも「本能」の方が近いのでしょうか。「欲望」と「本能」の違いについて考察してみるのもアリですね。
M06. 孤独のイドラ
来ました偶像アレンジ。フランシス・ベーコンの「4つのイドラ」にニーチェの超人思想をエクステンドしてホモ・デウスを目指す創作者応援歌って感じです。凋叶棕に出てくる神様は人類を応援しがち。
東方鬼形獣で「イドラデウス」という単語が出た時に東方ファンは「4つのイドラ」について学んでいると思うので詳しい内容は割愛します。フランシス・ベーコンが提唱する種族、洞窟、市場、劇場のⅠ~Ⅳまでのイドラ、それに五つ目があるとすれば何になるんだろうという思考の中で、埴安神袿姫の「孤立無援が誂えた造形神」という二つ名から「孤独」のイドラを付け加えています。
私は「孤独」のイドラを「私の持つ創造性は誰にも理解されず、唯一私だけが持つ創造性なのであるという孤独の中で生まれる思い込み」だと解釈しています。創造者にとっては究極の自己肯定ですよね。埴安神袿姫は遥かなる「創造」の道を行くものに対して「孤独」のイドラに身を焦がせ、そして問い続けろ、と言っているわけですね。自分の創造行為を誰にも理解されず、挙句には悪魔の所業だと非難される創造者にとってはこの上ない応援歌になるはずです。
これはニーチェの超人思想にも似ていて、誰にも理解されずとも、誰かに非難されようとも、自分の中にある確固たる基準を持ち、強い精神力で創造力を生み出す者を超人と言います。『ツァラトゥストラはかく語りき』には「孤独な者よ、君は創造者の道を行く。」という言葉がありますね。人智を超える創造を繰り返し、人類を取り巻く問題の数々を克服し、歴史の歩みを進めてきた我々の行きつく先はどうなるのでしょう。創造神をも超えてホモ・デウス(神)となるのでしょうか。
テーマ「欲望」の上では、この楽曲は「内発的な創造欲」になりそうですね。或いは「神を超えようとする欲」とも言えるでしょうか。
M07. 甘きゲヘナの誘い
この楽曲がこの位置にあるのが、報い要素強いっすね・・・。いや、報い受けてないパターンもあるのでね・・・。何が言いたいかって、生きてる間に報いを受けなかった欲望に塗れた人間は死後地獄に投げ込まれて燃やされるってことですよ。たぶん「孤独」のイドラに突き動かされて尚、報いを受けなかった人生を送った者も等しく。ニーチェ「それルサンチマンだろ」
まあでもどうでしょうね。タイトルが『甘きゲヘナの誘い』ですし、分かってても欲望に溺れちゃうイメージが近いんですかね。欲望のままに生きるって罪の意識あるじゃないですか。夜遅くにピザ頼んじゃったり、土日に昼過ぎまで寝ちゃったり。欲望って甘い味するんですね。
ヘカーティアといえばデスメタル。地獄といえばデスメタルですからね。神主が楽曲コメントでそう言っていたので間違いないです。メタルっぽいピアノアレンジになってて間違いない感じです。
M08. ラストオカルトファンタジー
どでかい大砲ぶっぱなして!虚無になるまでやるしかない!この楽曲は東方〇ャノンボールとは一切関係がありません!フォントはくろかねEBっぽいけど色合いがスペカの・・・。関係はありません。いいですね?アッハイ。
まあ、そうですね・・・。どちらかといえば、そうですね・・・。うーん、東の方のソシャゲって最初から霊夢がいるパターンがまず間違いないので霊夢推しの私にとってはガチャ引く意味も薄いから別に続けてもあまり楽しくはないというか衣装も原作の方が充実してるしで・・・。そりゃ私もソシャゲをちょっとはやりますけどモチベーションが無ければすぐ止めますし・・・。という愚痴はここまでにしておきます。
宇佐見が報酬系が発達してそうっていうのは分かる気がします。宇佐見って成績優秀ですし、小さい頃にいっぱい勉強して親や先生に褒められた経験がありそうで孤高を気取ってる宇佐見も誰かに承認されたり褒められたりすると実は・・・というのはあると思うんですよ。特別な自分に依存してるのはその通りなのかもしれないですね。宇佐見が幻想郷を気に入っている理由は、宇佐見自身が思っているそれではなく特別な自分をそのまま受け入れてくれ・・・と話がそれそうなのでここで割愛。あ、思ったんですが、レイムッチに引かせれば虹引けるんじゃ・・・と思いましたが、幻想郷は外の電波届かないんでしたね。
IQの低い宇佐見っぷり、nayutaさん凄いっすね・・・。KAWAII・・・。いやー、でも、あれですね。グリウサのあとがきで書いたこと思い出してみろ宇佐見!って感じですね。何が悲しいって宇佐見ってグリウサ見る限りフォロワー少ないだろうし、リア友もいないしで、一人でガチャ回して盛り上がってるんだろうなー、と思うと・・・。
正に現代人って感じですね!(謎のフォロー)
M09. 新世界の曙
夢落ちというのが報いってことですか?天界を滅ぼし、地上を滅ぼし、人類を滅ぼし、地をならし、美しい四季を作り、新しい生命を造り、悲しむ事のない心を創り、貧する事のない社会を作り、この世界全てを創り直した後の天子ちゃんマジ天使。
天子の欲望は憑依華のアレだと思うのでどちらかというと破滅的なイメージですが、このアレンジは勇者が世界救った後のEDみたいなちょっと壮大で前向きな曲調。故に天子に都合の良い夢、つまり夢落ちな気がします。まあ憑依華のアレも夢人格ですし・・・。あっ、でも天子の夢のアレンジは既にありましたね・・・。
M10. Greedy Girl
直球の霊夢曲来ましたね!これは春度高い!今までの霊夢曲より春度の表現力がえげつなくなってませんか?めらみさんもRDさんの歌詞もはなださんの絵もベスト過ぎてYR1の最適解ができつつあります!まあ実は言うとアルバム名が『報』なので若干警戒気味でしたが、博麗霊夢は作中で報いを受けてるので警戒する意味はなかったですね。
お饅頭屋さん、幻想郷の母、やしょうま屋、まごう事なき茨霊夢ちゃんですね。茨霊夢ちゃんは飛びませんから地に足を付けるっていうのはそういう事です。原作の霊夢は超人になってしまうのであえて俗っぽく描いているというのはFebriのインタビューで神主が言っておりまして、私は霊夢の超人の象徴って空を飛ぶ行為だと思うんですよね。だから書籍の霊夢はできるだけ飛ばない、飛ぶべきシーンでも飛ばないのかな、と勝手に思っています。
うーん、でも結構難しいんですよ。「なぜ霊夢が頑張って神社の客寄せする方法を考えたり、巫女の仕事とは程遠い商売に手を出したりするのか」という疑問に対する答えってはっきりとは出ないんです。五欲の巫女だし、星蓮船での振る舞いを見れば霊夢が俗っぽく欲望まみれなことは間違いないのですが、その裏は明日食べる飯がないわけでもなく決して彼女の生活が満たされてないからではないんですよ。
私はその疑問に対する答えを一応持っています。茨歌仙は風神録以降で、三月精第二部初期以前は風神録以前なんですよね。茨歌仙の霊夢は皆さんご存じの通りですが、それ以前の霊夢ってあんなのじゃなくって参拝客の少なさに悩んでいても茨霊夢のように暴走することはなかったんですよね。そう考えると風神録で早苗と守矢神社が登場したのは霊夢にとって大きな衝撃だったと思うんですよ。風タイトル画面のあんな悩んだ表情の霊夢はそうそう見られませんし、幻想郷で唯一の神社であった博麗神社のアイデンティティが危ぶまれる事態に霊夢は思い悩み混乱したんだと思います。その結果が茨霊夢なんじゃないかなーって思うんです。そしてたぶん早苗と守矢神社は一例で、新作が出る度にどんどん人妖が、勢力が登場し、霊夢を取り巻く世界が広がっていく、それぞれの勢力がそれぞれの思惑で行動して利益を得ている・・・「私も負けてられない!何かしなきゃ!」と霊夢に焦りと負けず嫌いがあったんじゃないかなーと。不器用だけどひたむきに頑張ろうとする霊夢が愛おしくてたまらないんですよね。
『Greedy Girl』では「知らないことばかりの空っぽな少女は気になったものにきまぐれで手を伸ばし、自分に何ができるかを探している」としています。確かに分からなくもないです。霊夢は博麗神社の巫女という役割を望まずに与えられ、人生を捧げその役割を全うしてきた故に巫女以外の自分自身に眠る可能性を知りたいと思っているのかもしれません。空っぽな少女の底なしの欲望で全てを引き寄せていく正にGreedy Girlな解釈です。欲の中でいえばイメージしがちな金銭欲ではなくって、自分の知らないことや可能性を知りたいという挑戦欲に近いんだと思います。
「わたしにだあってできるんだもーん!」はすっごい分かりますね。これは私の解釈とも重なりますし、実際咲夜の料理に張り合おうとしたり、早苗に張り合って博麗ランド作ったりしてますし、負けず嫌いで自信過剰な言い方がとてもいいですね・・・。実に霊夢らしい・・・。
『なにいろ小径』、『ノーモア、エニモア?モアーモアー?!』、『the music I love』。どんどん進化し続ける霊夢イズムに感動すら覚えております。「その旋毛に春風吹かせて」はすごい春度高い表現ですし、「靴音」はマジでそうなんだよ・・・靴音いい・・・だし、はなださんの絵は完璧な茨霊夢ちゃんですし、めらみさんはもうほんっと最適解ですし・・・。ほんとすごい・・・。もう私から何も言う事は・・・うーんでも霊夢が巫女の仕事をどう思っているのかは若干気になる部分が(以下略
M11. しあわせのかたち
最悪すぎる女の歌。これは間違いなく危険度Aですね。たぶんこのアルバムで一番最悪度が高い楽曲だと思います。
藍月なくるさんの憑りついている感のあるボイスがすごい!紫苑ってこういう背後からダウナーに語り掛けてくる喋り方しそうなイメージがあります。『ファンタジア』でも思ったんですが、こういうちょっと影のある女の役すごいっすね・・・。イメージカラー的にもピッタリ・・・。いつきんくる・・・。
話を聞いていくとどんどん「あ、これやべぇ奴だわ」になっていくのが、気付いた時にはもう遅い!って感じがしてスゲー最悪。我々は依神紫苑がどういうキャラクターなのかはよく知っているのでどうなるか読めるっちゃ読めるのですが、いざ一連の流れを歌にされると最悪感が一気に高まりますね・・・。紫苑をよく知らない人が聴いたら伝わるのかどうかは若干気になりますが・・・。まあでも女の人に貢ぐのが性癖な方も世の中にいるので意外と紫苑を好きになる人もいるかもしれないですね。
貧乏神である紫苑は「自分も含め不運にする程度の能力」を持ち、紫苑の持つ特性に関する解釈は「自分から幸せになる努力をせずに他人の力で幸せを得ようとするけど自分も含め周囲の人間の幸せは全て不運に変えられてしまう」だと考えています。たぶん自分から能動的に動かないと思うので、声をかけられるのを待つタイプのハニートラップっぽい感じだと思っています。冒頭でこの人はつい紫苑に目を合わせちゃったのかな?目を合わせて憑りつかれるなら貧乏神が住み着いている集落の一帯の人は暗黙の了解で対策とか知ってそうですよね。その集落に住む人達は貧乏神を利用してお金儲けしたりね・・・カツアゲロードみたいな感じで・・・。
あと重要なのが、紫苑自体が自分はどうあがいても幸せになれないと理解しているのかどうかですね。『しあわせのかたち』だと「幸せになれないと分かっていても誰かに憑りついて幸せにしてもらうしかない。それが私のエゴなんだ。」というちょっと可哀そうになる解釈。たぶんこの紫苑には悪気とか悪意とかはないんだと思います。ただそのエゴのままに生きる、それが紫苑の「しあわせのかたち」だという事なのでしょう。
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チーン。(M01へ戻る)
気付いたんですが、M01とM11の歌詞を比較すると一部リンクする部分がありますね?「明日~」「昨日~」「暗闇に沈んだその道~」の部分もそうですし、「金遣いが荒そうなやつには気を付けてね」と紫苑が言う裏で女苑は「誰をも信じられはしないだが財はたった一つの約束だ」と言っているのが対照的で面白いです。「幸」の裏には「報」があると考えると「𠬝」の字が紫苑に見えてきてなりません。
◇好きなワンフレーズTOP5
聴いていてグッと来た部分を紹介します。
1位 わたしにだぁってできるんだもーん!
『Greedy Girl』より。霊夢ちゃんはそんなこと言う。言うので一位です。
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2位 靴音で奏でるは少女の綺想曲
『Greedy Girl』より。靴音いいよね・・・。もう靴音だけで満足する・・・。霊夢ちゃんが靴履くときにつま先とんとんする音とか縁側に座って踵をとんとんぶつける音とかそういうの好き・・・。
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3位 その旋毛に春風吹かせて
『Greedy Girl』より。この表現天才!!!博麗霊夢の頭の春度を的確に表していて素晴らしい・・・。
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4位 おもいっきりおかねをかけて~
『しあわせのかたち』より。最悪を最悪だと認識させる素晴らしいフレーズ。「ああこれヤバいやつだ」と気づいたときにはもう遅いみたいな感じがして好き。
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5位 『孤独イドラ』の〈IV〉
『孤独のイドラ』より。音が好き!!!シンプル!!!
◇まとまらないまとめ
今作の感想、まずは「新時代の凋叶棕来たな・・・!」といった感じです。
特殊な歌詞の読み、原曲の使われ方、原作設定の踏襲と解釈、ブックレットの仕掛けなどの凋叶棕の作風はそのままに、音楽ジャンルやボーカルといった部分で新しい風が吹いていて新鮮さと新たな可能性を感じるそんな一枚だと思いました。『娶』の時も似たような感想を書いた気がしますが、『娶』は原作を見る角度(=表現)の新鮮さであって、今回の『報』は音作りやキャラクター選びなどもっと物理的な部分で新鮮さがありました。
次にキャラ解釈ですね・・・。今回の霊夢ちゃんは全然ありな解釈なんですが、咲夜さんと宇佐見ね・・・。キャラ崩壊感が若干ありましたが、テーマ「欲望」なのでその影響下にあるって感じもあります!
なんというか、アルバム内に登場するキャラクターがテーマによってキャラクター性が歪められるパターン、もしくは特定のキャラクターの影響を受けているパターンなのかな、と。例えば前者は『喩』、後者は『逆』が当てはまると思っていて、今回も一部そのパターンに当て嵌まる印象があります。宇佐見は女苑の影響、咲夜は小槌か霧雨の魔性に影響されているのかな?テーマ・コンセプトによってそのキャラクターの「欲望」が引き出されていると解釈すれば「いつもの凋叶棕」だなって思いました。
最後はテーマ「欲望」。というよりも依神姉妹ですね!女苑も紫苑も憑りつかれると碌なことにはならないですが、両者にはしっかり違いがあってそれをどう描かれているかが面白い部分です。
女苑は能動的な能力、紫苑は受動的な能力とも取れますし、女苑は財のみに影響し、紫苑は幸せの概念そのものに影響を及ぼすとも取れますし、この点を考察してみると結構面白いと思います。あっそういえば、M08で話に出したのでついでに触れておくと、東方キャ〇ンボールだと依神姉妹と一緒に鍵山雛も出ていて、女苑と紫苑と雛の違いを考えてみるのも面白いかもしれません。もちろんM08と東方キャノン〇ールは一切関係ありませんが・・・!
このご時世に『報』という作品が出るのは非常にロックですよ・・・。国全体で消費が抑制されている傾向がありますし、これは人々に「○○したい」という欲望が溜まっていると言えなくもないですし、久々の例大祭で溜まった欲望を発散したオタク諸兄姉も多かったのではないでしょうか。そんな社会的背景で『報』が世に出るというのは運命的にも感じます。『報』で描かれた幻想郷のように欲望を自由に発散できる幸せな世界を夢見て生きていきたいですね。
なるほど「すべての生きていく者たちへ」か・・・。
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以上が『報』の感想です!言いたいことそのまま書いたら長くなってしまった!(いつも通り)
今回のお気に入りは『Greedy Girl』『カネと楽園とエゴイスト』『孤独のイドラ』『Lovely/Easing/Wholesome/Distractive』です!あと『ラストオカルトファンタジー』はネタ枠として大好きです!訴訟にお気をつけて!
なんか久しぶりの記事になってしまいましたね・・・。ちょっとプライベートとお仕事がごたごたしてしまって更新が滞っておりましたが、引っ越してからはまあまあ落ち着いてきたのでそろそろ更新再開できそうです!来月投稿を目指しますが、正直に言うとまだどうなるかは分かりませんので気長に待っていただければと思います!
えっ?通常版が出たら買うかって?もちろん買います!欲望のままに!