サークル『相乗り回転ブランコ』/卯月秋千様のご執筆の例大祭16新刊『深葬版ラクトガールは八度死ぬ』を読ませていただきましたので、感想を書きました。凋叶棕的には『薦』収録の『R.I.P』をイメージソースとした東方Projectの四次創作(のリメイク)に当たる本です。
2014年の夏コミC86にて頒布された『ラクトガールは八度死ぬ』が新たに”深葬版”として生まれ変わった本でして、装丁がなんだか凄いことになっちゃっております。
公式ページ:http://passeiodobalan.co/lockedgirl/tufuiegoeris/
メロンブックス:https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=499409
当然、ネタバレがあるのでご注意ください。なお、深葬に関しては配慮しております。パスワードは中の真鍮板です。
◇『ラクトガールは八度死ぬ』について
2014年の夏コミC86にて発刊された『ラクトガールは八度死ぬ』、「もう5年も前なのか・・・(私の感覚的には3年前くらいだと思っていた)」と時の経過を感じつつも、この本がリメイクされると知り、手に取るのをとても楽しみにしておりました。
『ラクトガールは八度死ぬ』は頒布当時に読んでおりまして、「あの『R.I.P』に秘封倶楽部とは・・・?」とやや疑問を持ちながらも読んでみたら、一筋縄ではいかない手ごわい作品でした。
原典である東方Projectの重要な要素「弾幕ごっこ」&「スペルカードルール」が前面に描かれていて、さらに『R.I.P』の題材となったはなだひょうさん作の原案の流れをしっかり汲まれた上で、凋叶棕の作品群からの小ネタも控えめに仕込まれていて、さらにさらに執筆者独自のメッセージ性までもが織り込まれることでひとつの創作として昇華させているような、四次創作であることの強みがこれでもか!ってくらいに詰め込まれているそんな作品なんじゃないかなーと。
C95の時の『ロストガールは六度乞う』の感想でも書いたのですが、
「オリジナルを尊重し、そこにさらにオリジナリティを付加して残す」
『ラクトガールは八度死ぬ』にも同様にこの考えがあるのではないかと思っています。
しかし、『R.I.P』が題材なのに秘封倶楽部の二人が大きく目立ってしまっていて「蓮メリちゅっちゅ自重!」という個人的な所感もありましたが、まあこれも四次創作的ではあるのですよね。ラストシーンも秘封倶楽部サイドではなくラクトガールサイドで〆て欲しかったなぁという思いもあったのですが、そうしてしまうと、はなだひょうさんの原案に近づきすぎてしまうというか、『R.I.P』と秘封倶楽部のクロスオーバーを主題にした東方四次創作の結末としてはこれはこれでありと思えてきます。それに真鍮板の変化にも「こうあってほしい」というオリジナルの祈りが感じられて幕引きとして、私は割りと好きです。
そして、この作品が「手ごわいなー」と感じる一端は物語に度々登場した”Spell”という単語にありまして、ラクトガールにかけられた図書館の「呪い」をはじめ、ラクトガールの「交代」、「スペルカード」、「綴られた書物」、「手紙」といった物語に登場するモチーフに掛かっている点、ひっじょーにおもしろいなーと思うんですよね!
しかも、原作・東方Projectに登場する「スペルカード」の”Spell”から、はなだひょうさんによる原著の要素である図書館の「呪い」とラクトガールの「交代」という”Spell”へ、執筆者独自のメッセージ性である「綴られた書物」や「手紙」に込められた思いという”Spell”へと、どんどん繋がっていくのが素晴らしい!
物語のキーワードとして登場する”Spell”があることで、原典とオリジナリティの結びつきをより一層強くしているように感じます!
なんとなく「Spell!」と口に出して言いたくなるような、そんな魅力も相まって『ラクトガールは八度死ぬ』で私がいちばん好きな要素が”Spell”です。
以上が『ラクトガールは八度死ぬ』についての、私の所感です。
◇『深葬版 ラクトガールは八度死ぬ』の感想
ここからは『深葬版 ラクトガールは八度死ぬ』の感想になります。
とにかく真っ先に言いたいことは・・・!
もう見た目からしてつよい!中二力!ケースに収納すればもはや本には見えない!まるでファンタジー作品で登場する魔法の石盤のような佇まいです!
メロンブックスで見かけたときに、その・・・すごく・・・浮いていまして・・・!半笑いで「うわ、あった」とつい言葉が漏れてしまい・・・!
そして、とても言いにくいのですが本棚に収納するときも、その・・・困ります・・・!もうどこにどうやって置けばいいのやら・・・!神棚?仏壇?とりあえず私は棚の上に平にして置いています。
この本を晴れの日の外に連れ出してみたのですが、八端十字の銀が太陽光の反射で輝くんですよ!下の写真のように眩しいくらいには輝くので、この感想読んでいる方も是非お試しください。
もちろん、ケースの中の本も凝られています。火水木金土日月星をイメージした金の紋様が光っていて魔力的なものを感じます。あと、肌触りがいい・・・。でも触っていると金が剥げそうでちょっと怖いですね。気を付けます。
肝心の本の中身ですが、ヴワルの設定更新や細かいセリフの変化はありますが物語の大筋に変化はないようです。「進捗ダメです」が無くなっててちょっと笑いました。また、魔女達の回想シーンに合わせて上部の枠が変化したり、幕間の”Spell”が写実的になっていたり、演出面の強化で物語がより分かりやすくなったように思います。
大筋は基本同じなのですが、新たに加筆された冒頭のシーンによって作品全体の触感がガラッと変わったと感じますね。彼女の存在が目立つことで、私が当時読んで気づけなかった部分が浮き彫りになった気がします。
例えば、呪い(”Spell”)と解呪(”dispel”)。彼女だからこそ、魔女に呪いをかけることも、魔女の呪いを解呪することもできたのだと妙に納得がいき、真鍮板の変化に込められた祈りも深くなっている、そんな気がします。彼女、スペルにおいては反則技持ちですからね。時空を超えるスペルもディスペルもお手の物。
元の文庫版と深葬版のどちらが好きか。
私は深葬版が好きです。装丁の良さもあるのですが、物語に込められた執筆者の祈りがより一層深くなっていて、ひとつの四次創作として素晴らしい作品だと思います。そして、秘封俱楽部が図書館を訪れた意味もなんとなく分かったような気がします。
Tu fui, ego eris.
◇After Word
『ラクトガールは八度死ぬ』、私としては夏がくると読み返したくなる本です。
例えが難しいのですが、うーんそうですね・・・。ジュブナイル系の映画を夏休みに見に行った時のような感覚・・・?読後感がさわやかで、余韻がとても良いんですよね。それにしても、今年の五月は空の青がきれいでした。
深葬版を手に取って確信したのですが、サークル『相乗り回転ブランコ』さんの作品は繰り返し繰り返し読書すると、さらに面白くなるのですよね。序盤のシーンの意図とか、台詞の意味とか、ふわっと幻視えてくる気がして。例えば「科学世紀において綴る事とはどうあるのか」など。再発見の連続でとても楽しめました。
私が気になるのは『R.I.P』を聴いた事がない人が本作を読んだらどうなの?っていう点。
弾幕ごっこを交えながら魔女の正体を匂わせていく演出が巧みなので、『R.I.P』知らない人が読むと、ミスリード誘発させながらもじわじわと真相が分かってきて、かなり衝撃的なんじゃないかなー?って思っています。私では実際どうなのかは分からないのであくまで想像ですが。
しかし、四次創作としてパワーがすさまじいので、やはり『R.I.P』を聴いて物語の世界観を知ったうえで読んでもらいたいですね。先にこの本を読んでしまったって人がいれば、『R.I.P』を是非聴いてほしいです。聴けば破壊力が累乗加算されるはずですので!
あっあと、RDさんによる『R.I.P』解説も読んでおくと良いのかも?(→凋叶棕運営記 薦のすゝめ 第八回「(R.I.P)」)
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以上、いつも通り失礼ながら軽率ながらの感想でした。ああ、申し訳なさでMPが消費されていく・・・!また、今回の記事に写真が多い理由は撮ってて楽しかったからです。今年の5月は晴れの日が多かったのでとても助かりました。大事なことなので二回言いますが「空がきれい」でした。
さて、夜も耽ってきましたので『R.I.P』を聴いて眠ろうと思います。
おやすみなさい。