【C95】RDWL-0028『娶』感想

ろうそくと障子が似合う

凋叶棕、C95冬コミの新譜『娶』を買いましたので感想を書きました。

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気の向くままに、ありのままに感想です。本記事には軽率な内容や私の趣味・性癖が含まれております。お読み苦しい部分もあるかとは思いますがご了承ください。

ネタバレがあります。まだ購入されていない方とまだ聴いていない方は・・・

決して見てはなりませぬ。 | 障子 |д・)   |


◇「異類婚姻譚」がテーマ

アルバムのテーマは異類婚姻譚

「いるいこんいんたん」と読みます。平仮名にすると可愛い感じですが、実はとてもハードな内容です。

「異類婚姻譚」とは、”人間とは違う存在””人間”が結婚する物語を指します。

そして、”人間とは違う存在”とは、動物!亜人!精霊!妖怪!神!人外異類ならなんでもござれです。

異類婚姻譚は昔話によく見られるもので、日本だと「鶴の恩返し」とか「雪女」とか・・・。海外だと「美女と野獣」とか「人魚姫」とか・・・。日本に限らず、なぜか地球全土に沢山そういったお話があります。不思議!

ここで善良な東方ファンには一つの考えが思い浮かぶのです。

東方キャラのほとんどが異類じゃん?

つまり「異類婚姻譚」って東方キャラと結婚する話ってこと!?

僕も○○ちゃんと結婚したい!

いやぁ、まあぁ、そうなんですけども・・・。重要なのはそこではないです。

種族が違えばそれだけハード!多くの場合は破局で終わり!結婚したとしても子供を残してハイサヨナラ!最悪の場合は嫁婿のどちらかが死ぬ!それが日本の異類婚姻譚!

「○○ちゃんは俺の嫁~」などと戯言を抜かすオタクにとって夢のようなアルバムです。

metoribig

C95凋叶棕新譜『娶』は、【人】と【妖】の関係性として「異類婚姻譚」をテーマに制作されています。

今作は聴いていて情景が思い浮かびやすく、脳内PVマンの私にとって非常に聞きやすい作品でした。物語音楽ってやつです。私の好物ですね。

聴いている人の心を動かしてくるタイプの楽曲が多く、一発一発のパンチが重いです。心臓を直接殴られる感じです。初めて聴いた時、いろんな意味で心臓がドキドキしっぱなしでした。

解釈の難易度は高くないと思います。歌詞読んで楽曲を聴いていれば自ずと話が理解できるでしょう。でも、原作設定を知っておいたほうが解釈の幅は広がるかも?そこは「いつもの凋叶棕」ですね。


◇見るなのタブー?

「異類婚姻譚」とは、ただ異類と結婚するだけの話ではありません。前述のとおり、日本の異類婚姻譚の多くは破局で終わるのですけども、その破局には共通するとある原因があります。

「見るなのタブー」

「見るなの禁」とも呼ばれるこの用語は「異類婚姻譚」の話を構成する大きな要素となっています。

異類の正体を見てはいけない。知ってはいけない。聞いてはいけない。理解してはいけない。

このタブーを守らなければ破局が訪れるわけですね。鶴のお嫁さんはどっかいっちゃうし、雪女さんは消えちゃうのです。女に捨てられた男ほど悲しいものはありませんよ。

ということで、「見るなのタブー」を分かったうえで『娶』を開封していきましょう!!!!

さて、今回の装丁は・・・あれ?

東方キャラがいない?ジャケットにもケース裏にも見当たりませんね。ケース裏の白無垢たちが東方キャラなのでしょうか?にしても『娶』、東方アレンジのCDにはとても見えない・・・。ですが、中はしっかり東方ですのでご安心を。

では、ケースを開けていきます。イメージトレーニングはバッチリです。見るなのタブー知ってますからね私!

(イメージトレーニングの様子)

おそらくブックレットを見なければ問題ないはずだ。

「見るなのタブー」だし、見たら絶対即死するパターンのアルバムだろう?

だからいつも通りCD外してドライブに入れるだけ。うん、これでヨシ!

フフフ・・・。では、開けます。

おっ!ディスクのデザインは角隠し!しかも反射する部分に自分の顔が写る!なんか私が角隠し被っているように見えてなんともいえない・・・。かわいい女の子が写っていてほしい・・・。

じゃあ予定通り、CD外して、と。

ぐわあああああああああ!

くっ反射的にケースを閉じてしまった!私は何も見ていない!私は紅白衣装の女に弱い!まぶしすぎる!尊死!まぶ死!!いやそうことではなくてあの緑の巫女さんがいるのが!えっそういうことなの!???ダメでしょ!!!いやまさかあの曲が・・・?!!いやまさかケロちゃんじゃなくて??えっ?マジか!いやそんなはずはない見間違えの可能性も!たぶんゆうかりんだ!緑だし!うん!たぶんそうだ。そうなんだ。そうそう。そうなんだよ。

す、少し落ち着こう・・・。

ブックレットは絶対見ませんからね・・・。一周聴くまではね・・・。

見るなのタブー恐るべし・・・。角隠し(CD)を取ることで正体(インレイ)が明らかになってしまう仕掛け、さすがです・・・。


◇楽曲の感想

嘘か誠か、全部で13曲(?)あるらしいです。音と楽器がユニークで新鮮で面白いアレンジが多い印象です。全体的に和風寄りでどこかオリエンタルでフォークロア。癖になる楽曲ばかりでループ性能は凋叶棕の中でもトップクラスのアルバムだと私は思います。

M01. 祝言

ん?ちょっと待って。まぁサンプルの時点でそんな予感はしていたのですが!今、博麗って言った?言ったな!言ったでしょ!ハッキリと!はくれいじんじゃのおおまえにって!

いやいやいやだってそうだろ?あの妖怪スレイヤーの博麗の巫女さんが妖怪と人間の結婚を祝福するわけがない!だって霊夢ちゃんの妖怪に対する厳しい態度!人間の味方(要出典)である霊夢ちゃんがこんな状況を見過ごすとは思えない!まぁ博麗の巫女は霊夢だとは限らないのだが、それでいいのか博麗の巫女!!!

はい。静かにします。冷静に考えると、妖怪側は妖怪である事を隠して人間と結婚するはずです。霊夢ちゃんのこれまでを見ていれば人間に化けた妖怪を見破れた事って実は少ないですよね。例えば、マミゾウとか某ピンクの仙人とか。なので、知らずに神前式を執り行っているのかもしれませんね。霊夢ちゃんのんきなんで。(ところで霊夢ちゃん、霧雨店のご令嬢と香霖堂店主が結婚する羽目になったらどうするの?

いやだが、それでも御利益のない博麗神社にそんな依頼が来るのでしょうか?妖怪と人間という禁じられた関係だからこそ、人気の少ない神社で祝言を挙げる選択肢はアリ、ということです?

何と形容しましょうか、ほんと一曲目から飛ばしてきますね・・・。一部の人にとっては『童祭』のアレンジで結婚というだけでもうアレなのがね・・・加点ですね・・・。(加点とは?


M02. あの日のサネカズラ

植物女房、でいいのでしょうか?日本昔話では『月見草の嫁』という花の精と結婚する異類婚姻譚がありますが、この楽曲と内容は違います。むしろ植物聟・花聟が近いです。

サネカズラは夏に花を咲かせ、秋から冬にかけて赤い実を実らせる植物。雌雄異株というのも特徴で、メスの花とオスの花があります。そして、花言葉は「再会」、「また逢いましょう」。

風見幽香とサネカズラの花が年に一度の再会を果たし紅い実を実らせる愛の物語。風見幽香の妖怪としてのキャリアを考えれば、それはおそらく古くから続く壮大な愛の営みなのでしょう。

花は依代、心が宿東方花映塚のストーリーを知っていればこの概念はよく理解ります。亡くなった者の意思が宿る依代としての花、風見幽香の「霊が宿り、花が咲き、霊が去ると花が散る」というセリフも原作で印象的でした。

サネカズラに宿るのは、風見幽香を愛した人間の魂?古くから生きる妖怪ですので、人間との恋の回数も多いのかもしれないですよね。風見幽香が季節毎に花が咲く場所へ移動している理由は花を見るだけが目的ではない・・・?

中盤の盛り上がりがとても好きでドラムがドンドン響いてくる感じ!とても好きです。でも、かなりドSな気がしますね。花を操る程度の能力ですし、「何もしなくても花に咲かれれば、 私の立場が無いじゃないの」なんてセリフを放つ妖怪ですから、咲かせ!咲かせ!その花を早く見せろ!と言わんばかりに能力を行使してそうで。(見方を変えれば逆レ〇プ・・・。


M03. ??の花嫁

イントロが好みです。あえてサビを持ってくるのが特に。

『平安のエイリアン』は鐘の音すごく似合いますよね。『もっともおそろしいものについて』でも鐘の音が含まれていたのもあってか、鐘の音が似合うイメージが私の耳に付いてしまっているみたいです。原曲にも鐘の音ありましたっけ?どうでしたっけ?(原曲を聴こう

『平安のエイリアン』といえば、黒い雲が空を覆いつくす正体不明の怪しい音使い、そして終盤にかけて死闘感というか妖怪退治感というか中二感が格好良いBGMですよね。そういう点でも『??の花嫁』はポイント高いです。(?

ところでこの楽曲のイメージは、鵺女房?エイリアン女房?正体不明女房?

うーん、理解かりません。

ぬえの能力の「見る人によって形を変え、見る人の心の中で、勝手に姿形を補完して自分の中だけで納得のいく形に落ち着く」という特性を考えれば、花婿が見たのは己の脳内情報から作り出された偶像なのでしょうね。

日本昔話に『食わず女房』というお話がありまして、地域によって嫁の正体がバラバラなんですよね。蛇、タヌキ、蛙、山姥、蜘蛛など様々。もしかして、ぬえの所業なのでしょうか?


M04. 共に歩くその心

勇儀姐さんの笑顔が素敵でランコさんの歌声も勇ましくて、もうなんか私のような陰キャラには眩しすぎます。

鬼女房、即ち鬼嫁です。

星熊勇儀の性格が強く出ているといいますか、東方地霊殿での振る舞いや求聞口授の記述に書かれている正にイメージ通りで、臆病者は嫌いで気に入った人間に腕っ節比べを要求する所も原作通りです。負けじと「さにはあらず」なんて言っちゃう人間がいたら勇儀は絶対気に入りますよね!

石桜が出ている点を見ればロケーションは旧地獄で勇儀が地上から地底(旧地獄)へ移住した後の話のようです。鬼が移住し始めたのが数百年前~からなので、源頼光が酒呑童子を退治した時代よりも後の時代でしょうか?

星熊勇儀、最近の私のイメージでは結構拗らせてるんじゃないかなって思っています。『東方外來韋編 2018 Spring』のクロスレビューに見える嫉妬や求聞口授の「人間との接触に楽しみを見出せなくなっていた」の記述が気になってて、この鬼、実は真っ直ぐに見えて結構拗らせてる感じがするのですよね・・・。

重い女というか、ヤンデレとはまた違った愛の重い女というか・・・。そういうイメージもあって、この楽曲すっごい重い感じが・・・。こんな事考えてる私は勇儀姐さんに一度張り倒された方が良さそうです。


M05. ミノキチグリーフシンドローム

和風クリスタライズシルバー!和風だけど和楽器だけではなくて、洋楽器の弦もありますし途中から挿入される雪っぽいピアノもあります。楽器は和洋折衷だけどアレンジはすごく和風という、ちょっと不思議な新感覚。

割と自然にクリスタライズ・シルバーしていて、最初聴いたときは「くりすたらいずしるばー???」だったのですが、聴いている内に「クリスタライズシルバーだこれ!」ってなりました。聴いていると和服のレティさんの舞が思い浮かんでしまいます。

タイトルはラフカディオ・ハーン著作の『雪女』でお馴染み巳之吉さんから。結末は子供を残して消えるパターンですね。突然別れを告げられた巳之吉の病的な悲嘆を表しているのでしょうか?子供沢山いたようですしそれはもう悲嘆でしょう・・・。

ところで、レティさん。冬は雪女やってますけども、冬以外の季節にどこにいるんでしょうね?求聞史紀の記述でもその場所は不明らしいですが、まさか人間の男に匿ってもらったり、里の人間に混ざっていたりするんですか?


M06. meaning of life

耳を劈くようなギターの音!イントロからして危険な香りがしますが、実際かなり危険でした。

一度限りの逢瀬、蜘蛛女房。黒谷ヤマメに美味しく食べられちゃうお話のようです。

「お寺に来る悩みを持った人間が美味しそうだから」という理由で命蓮寺に入信しようとする彼女ですから、普通に人間食べてますよね。それはもう頭からバリバリと。

マゾヒスト的な意味で食べられたい願望があるのか、それとも崇拝対象の血肉として一つになりたい願望なのかは理解りませんが、この食べられようとしている人間はどういう経緯でここに至ったのか気になります。自ら望んだ事のようですがかなり病的な人間です。

ヤマメの能力から考えて異常性癖は疾患ってことですか?ただし、ヤマメの操る病気は主に感染症なので精神的なそれとはまた別かもしれないですが、ヤマメにとって精神病はスパイシーらしいのでちょっと病んでるくらいが美味しいんでしょうね。

めらみぽっぷさんの歌い方にヤマメらしさを感じます。気さくでフレンドリーな口調のせいか、怖い事されているはずなのに何故だか安心できます。さすがは地底の人気者!


M07. モノガタリの裏側

『ネクロファンタジア』のイントロが好き!チェンバロの音がもう性癖すぎます!

『ミノキチグリーフシンドローム』と同じで和楽器と洋楽器が混合した和洋折衷アレンジです。アコーディオンを主軸に和琴や太鼓などの音などが入り混じりこれまた新鮮な感じ。アコーディオンの所為もあって西洋の街並みが思い浮かんでしまいますが、アコーディオンが入っていないパートは和風の妖怪っぽいイメージがあります。

タイトルの『モノガタリの裏側』は何を指すのでしょうね?詳しい事は私にもよく理解りません。

隣の秘封俱楽部の曲も気になるので、メロディーの中に魔術師メリーや化猫の幻がないか探してみましたが、私の耳では『夜が降りてくる』しかわからなかったです。夜降りで合ってるかどうかも自信はありません。

仮に八雲紫をイメージしたアレンジなのだとしたら、神隠しだけでなく異類婚姻譚にも関わっているということでしょうか?異類婚姻譚と八雲紫というキーワードで脳内検索すると、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が出てきますね。彼が著した物語には『雪女』、『青柳のはなし』など異類婚姻譚が含まれています。これらの物語は彼の妻であった節子という女性から伝え聞いたもので、節子は松江藩(八雲)の出身らしいが・・・?


M08. [SiO2]の瞳

「このメリーって、ひょっとして…ロボだったのかーーーー!?」

「そ、そんな訳ないよー!違うよねメリー!?ロボじゃないよね!?」

【そうね、私もそう思うわ】(流れる機械っぽい音)

「ロボだこれーーー!!!」

はい。誠に申し訳ございません。ちょっとキツイ楽曲だった故、少々取り乱してしまったようです。そもそもロボとは限りませんので!ケイ素生命体メリー説もあります!

メリーの瞳をひたすら褒めちぎる女、蓮子ちゃんのお話のようです。メリー女房。ロボ女房。

まず突っ込みを入れますと、蓮子ちゃんさぁー、そもそもメリーの眼をいつも気持ち悪いって言ってたよね???もしかしてツンデレなの???いや大空魔術で羨ましいって言ってたから嫉妬か!そうかそうかなるほどね!

あと、【そうね、私もそう思うわ】という返答。純粋に肯定だけをしてくるメリーはなかなかイメージに合わないというか、秘封俱楽部の会話って偏屈的で粋な返し言葉が魅力みたいなところもあるので、それでいいのか秘封俱楽部!!!という感じです。(やはりロボでは?

そもそも大空魔術の蓮子は月面旅行は値段が高すぎて断念してるので衛星カフェテラスにも行けないはずではなかったでしたっけ?ということは、この蓮子ちゃんはお金をかなり稼いでここまで来ている?ならば大空魔術の時代よりも少し未来の話なのかもしれませんね。

孤独の谷を越えて不気味の谷も跨いでいるので、かなりの末期感が漂ってますね。不気味の谷跨いでるのは、科学世紀の技術力が高いからなのか、蓮子ちゃんの感性が崩壊しているからなのかは理解りませんが、秘封俱楽部の一つの結末としてこの楽曲が位置しているような気がします。(某rebellionの続きだったら嫌だなぁ

どこか違和感のある秘封俱楽部ですが、楽曲の雰囲気はSFで宇宙的で、どこか『衛星トリフネ』を思わせます。最後の盛り上がりは壮大で圧倒されました!秘封俱楽部は永遠!ヤッタネ蓮子ちゃん!バンザイ!

ところで、バックインレイのあれ。皆様はどう考えますか?蓮メリは異類ですよね?どっちも?そうではない?


M09. T/A/B/O/O

このアルバムで一番好きかもしれないです。エゴい内容でありながら幻想郷の世界観を覆うようなメタさ、とても凋叶棕らしさがあり、『娶』のテーマの中核にある楽曲だと思います。タイトルのスラッシュはTABOOをネムノマチェットソード(要出典)でスライスしているイメージなんです?タブーに負けるな!乗り越えろ!的な?

山姥女房。ある男性と坂田ネムノのお話です。

アメリカのカートゥーンを彷彿とさせるイラストも相まってクスッと笑えて面白いお話なのですが、異類と人間の在り方について歌われていて思わず心を揺さぶれました。

ネムノからすれば、正体を仄めかしたり、刃物を研いだりして人間へ恐怖を与え、山姥としての存在意義を人間へ示す必要があるはずです。この男性は嫁のエゴを享受しつつも関係を続かせようとするのが、とても愛に前向きで感銘を受けます。イケメン!

この男性の考え方は妖怪の存続にも関わってくるような気がしますね。幻想郷では不思議なものは不思議なものだと受け入れる考え方をするからこそ妖怪は存在を保っていられるし、外の世界のように不思議なものを見ては原理・仕組み・正体を暴こうとするようであれば妖怪は存在できなくなってしまうのです。

あと、ネムノの聖域を作る程度の能力の解釈にも注目です。私のイメージでは山姥の住む土地一帯が聖域というものだったのですが、なるほど!正体を観測できてしまう空間こそが侵してはならない聖域!ならば障子は正に聖域と聖域外の境界!

『T/A/B/O/O』、ものすごく好きです。実はまだ語りたいことが多くあって、下手すればこの楽曲の感想だけで一記事書けそうです。が、今回は手短に。


M10. 創られゆく歴史

語彙力がなくなるくらいふいんきがとても好み。夜の和室で聴くと悶えてしんでしまいます。けいねせんせいすき。

夜も耽った夜の四つ、里のとある長屋の寝間、人の営みと逢瀬、創られゆく歴史。

楽曲全体に漂う空気感からイメージするのはこんなシチュエーションです。『娶』ジャケットのイメージがかなり近いです。

幻想郷の【人】と【妖】が紡ぎだした歴史の中にはおそらくこんな逢瀬もあったのだろうなぁと思いを馳せてみたり、香霖堂の店主のような存在が歴史を証明しているよなぁと考えてみたり、慧音先生ってワーハクタクだけど半妖の範疇に入るのかどうか考察してみたり、まぁでも慧音先生と逢瀬している人間もいたんだろうなぁと妄想してみたり、しかし慧音先生と逢瀬しても無かったことにされるので満月の夜は避けた方がいいよなぁと画策してみたりです。

実家の和室で寝っ転がって部屋暗くしてロウソクに火を灯してこの楽曲聴いていると、こんな妄想が私の脳を埋め尽くします。

使われている楽器は和洋折衷ですが、この楽曲は和寄りのイメージが強いです。今作のインストはどれも和洋折衷多様な楽器が使われていて新鮮な感じがします。


M11. 蛙姫

CD取った時一瞬見えたアレ!嫌な予感が当たってしまいました!「おーそーばーにおーいてくださいねー(謙虚)」←ここ、信仰は儚きなんとか!

蛙姫との婚礼。蛙神女房。早苗様と結婚するお話のようです。(白目)

そうですよね、早苗さんは人間である前に現人神ですからね。里での信仰も順調に獲得していってるし、遠い未来には神奈子様や諏訪子様に並ぶ可能性だってありますよね?柳田國男の『山の人生』にある「代を重ねて神を代表する任務を掌っているうちに、次第にわが始祖をも神と仰いで、時々は主神と混同する場合さえあった」という記述も考慮するとなかなか面白いですね。目覚める神の血。蛙比売神早苗様アツいです。

蛙の異類婚姻譚は結構あります。日本だと『蛙女房』に『蛙婿』、海外だと『カエルの王様』。しかし、この楽曲のイメージはそのいずれでもなくラフカディオ・ハーンの『忠五郎のはなし』が近いです。コワイ!

『鳥よ』の歌詞を見ようとしても目が吸い寄せられてしまう!この早苗様の表情に美しいを通り越して恐怖を感じます。丸みを帯びた輪郭や目の描き方がすごく蛙です。この早苗様の舌、絶対長いですよね?バックインレイの早苗さんがめちゃくちゃかわいいので私は交互に見て中和しています。


M12. 鳥よ

天狗に攫われたい願望を持っている東方ファンは4人中1人くらいはいるのではないでしょうか?少年だった頃に一度でもいいから攫われてみたいものです。いかがわしい意味ではなく。

Wind tour。かつて天狗に攫われたとある人間のお話です。鳥女房。鴉天狗女房。

バグパイプの音!スコットランドの戦士ハイランダーのイメージが高地に住む天狗に重なります。天狗の社会に人里とは違うどこか異民族的なイメージもあり、天狗に攫われ異民族の世界で過ごした一時、みたいなものをバグパイプから感じます。

里に最も近い天狗である射命丸文に二度と会えなかったなんて事、幻想郷ではないと思うのですよね。なので私は外の世界なのかな?と思っています。他にも、幻想郷に結界が張られる前の話とも考えられるかもしれません。

他の『娶』の楽曲にも言えることですけども、この楽曲、妖怪側の内面描写が一切ないのですよね。どういう目的で少年を攫ったのか、なぜ今になって表れたのか、気になりませんか?もちろんただ少年を愛でたいからという理由もあるのかもしれませんが、相手は妖怪ですよ?しかも頭の回転が特に速い天狗という種族、何か企んでいるような裏を考えてしまいます。死ぬ間際に現れる鴉は実際不吉。

そういえば、『仙境異聞』という天狗に攫われて異世界を体験した少年のお話がありまして、去年ちょっとしたブームになってましたね。残念ながら少年寅吉をさらったのは天狗のお姉さんではありませんし、『鳥よ』と特に関係が深いとは思えませんが、一度読んでみるのも良いと思います。


M13. 東方人妖小町

ど真ん中の霧雨魔理沙に悪意を感じます。霧雨魔理沙は誰の子ぞ?霧雨店の親父さんとその妻の子だって?えっ、あんたにはそう見えるの?

うーん、実際どうなんでしょうね?(何が

東方鈴奈庵読んでいて分かる通り、昼間っから妖怪が歩いているような場所ですからねぇ。求聞史紀の136ページにも妖怪と人間が店で一緒に酒飲んで盛り上がるって記述がありますよねぇ。結界が張られる前の生まれだけど香霖堂の店主もいるからねぇ。小鈴や魔理沙が特殊な能力を身に付けているのもとても気になりますねぇ。本当に純人間?ほぼ妖怪みたいなものでは?

つまり何が言いたいかというと、

異類婚姻譚は在るのです。

公式設定の囁く蓋然性がそう告げているのですよ!

異類と呼べる東方キャラは一見人間っぽい形をしていますが、角や耳が生えていたり、衣装が奇抜だったりします。しかし、少し妖術で角や耳を隠したり、村娘の格好に着替えればそれはもう里の村娘と見分けがつかなくなるわけですよ。(参考:鈴奈庵第四十九話)

(←のんき)な人間はそれが妖怪だと気付かぬままでいるだろうし、察しの良い人間は妖怪だと気付いているし知っているのです。そして、タブーもきっと、暗黙の了解がごとく・・・。

【人】はそれが【妖】と知っていながらも知らぬまま分からぬままに生きていく、【妖】は【人】と変わらぬ姿のままに【人】へ存在意義を示しながらその命続かせていく、そうなってしまえば【人】と【妖】などに差などなく、皆等しく人妖小町。それは【半妖】も、きっと。

【人】と【妖】の正しい在り方。その哲学への答えの一つが『東方人妖小町』だと感じます。昔話として伝えられてきたタブーが幻想郷では暗黙となり、【人】も【妖】もそうして続いていくのです。

(だから、チィちゃんの事に気付いても口にしてはなりません・・・。分かりましたね?)

ところで、イラストにも居る博麗の巫女ちゃんは【人】でいいんですか?【妖】でもないだろうしこの娘何なのです?人間巫女だから【人】?【決して分からぬ者】なの?巫女ちゃんは分かった方がいいのでは?そうこうしてるうちにも人里で【妖】の血が増えてますよ?それでいいのか博麗の巫女!!!


◇好きなワンフレーズTOP5

聴いていてグッと来た部分を紹介します。

1位「それだけなのに!(ッターン」

『T/A/B/O/O』より。ドラムの音が軽快で耳から離れません。脳内PVではここでTABOOがスラッシュされています。ズバッと。

2位「その手取る覚悟をもて足を踏みやるがいい

『東方人妖小町』より。めらみぽっぷさんがイケメン過ぎて惚れます。幻想郷の賢者はこういうこと言いそうです。

3位  (ネクロイントロのチェンバロ)

『モノガタリの裏側』より。もはや性癖です。

4位「鳥よ…鳥よ…」

『鳥よ』より。どこの「鳥よ」かは三点リーダーで伝わってください。nayutaさんの感情の入れ方ほんと素晴らし・・・。涙腺に来る・・・。

5位「花は依代 宿す命ほど

『あの日のサネカズラ』より。ここのめらみぽっぷさんの穏やかで優しい歌い方がとても可愛いらしいです。


まとまらないまとめ

いつもの凋叶棕だけど、いつもと少し違う、そんな一風変わった新感覚なアルバムでした。特に『T/A/B/O/O』と『東方人妖小町』がとてもお気に入りです。

最初聴いた時は、アレンジと音の面白さに脳のリソースが割かれてしまって内容が頭に入ってこなかったのですけども、何回も聴いているうちに深みが出てくるといいますか、歌詞やブックレットで表現されてない部分がだんだん気になってくるのですよ!

『娶』の楽曲は【人】と【妖】どちらか一方が一人称になっていて、その一人称は楽曲の最後まで同じなんですよね。もう片方は一人称にはならないのです。そこは秘されているが故に、【人】と【妖】が互いに何考えていて、どうしてこの結末に至ったのかなんて妄想しだすと止まりませんよ。でも、秘されているものに触れるのはタブーにあたるかもしれませんね?

『T/A/B/O/O』めっちゃ好きですねぇ・・・。『娶』という作品どころか、幻想郷の根幹に関わっているというか・・・。この楽曲でまだまだ言いたいことがあって、例えば、【聖域】って立ち入ってはならない場所を指す言葉で、神社においては神域・禁足地などのように結界で隔離された場所を指しますよね?幻想郷を博麗神社の聖域とするならば、名曲『絶対的一方通行』で歌われたメッセージは聖域を侵そうとしている者への警告とも解釈できますね。タブーを破ってしまう事で宇佐見蓮子は一人ぼっちになってしまった、そう考えてみると『絶対的一方通行』も異類婚類譚に通ずるものを感じます。

見るなのタブー、面白い概念ですよね。これをルールと呼ぶなら、もう一つ幻想郷には重要なルールがひとつ。【命名決闘法】。妖怪は人間を襲ったり惑わせたりし、巫女は人間を襲う妖怪を退治する、その流れの中でスペルカードによる妖怪の欲求解消と人間の存続を促していく、そういう持ちつ持たれつの世界観なんですよね。

今までの凋叶棕ではどちらかといえば【命名決闘法】から哲学して人間と妖怪(と巫女)の関係性を表現した作品が多く、例えばスペルカード三部作と呼ばれる『望』『求』『掲』の3つのアルバムがありました。今回はこれらのアルバムとはまた違った角度で人間と妖怪の関係性を表現されていて、今までにない新しい幻想郷哲学を感じられました。今までの楽曲の中にも異類婚類譚的なお話はありましたが、物語としてのアプローチをされていても【人】と【妖】の関係性という観点で深堀されたものはあまりなかったように思います。

それにしても、博麗霊夢。【命名決闘法】なら輝けるのに今回みたいな場合は不甲斐ないですよね。求聞口授読んでてすごく思うんですけども、ほんともうこの娘、妖怪を退治する事以外では、ほんともう・・・。はぁ、お父さんはかなしい。(?

全然感想がまとまらないのに、実はまだまだ言いたいことがたくさんあります。(ゴゴゴ

でも、少しすっきりしましたので、今回はこれくらいに抑えておこうと思います。次の更新は寄稿作品と凋叶棕三次創作の感想記事になりまして、1月下旬くらいに投稿しとうございます。

ここまでお読みいただきありがとうございました。『娶』に霊夢枠ないのに博麗霊夢の話を出してしまい、なんかすいませんでした・・・。ええ霊夢好きなんで・・・。

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