Fragile Idol-Worship

hotoke


Featured in: 騙
track: 13
arrangement: RD-Sounds
lyrics: RD-Sounds
vocals: めらみぽっぷ
original title:虎柄の毘沙門天
length: 04:56


◇概要

RDWL-0006『騙』トラック13。

“脆い”を意味する形容詞”Fragile”と偶像崇拝を意味する単語”Idol-Worship”、題名の意味は歌詞で歌われている“かくも脆き偶像崇拝”といったところか。

『虎柄の毘沙門天』の力強いメロディーをアレンジしたこの楽曲は、東方星蓮船の五面ボスキャラクター『寅丸星』を主観としたものとなる。

恩人の妙案により、妖怪でありながら人間の信仰を受けとめる偶像となった寅丸星。そんな矛盾を抱えた存在となった彼女は心の中で何を叫ぶのか。

寅丸星のバックストーリーと、アルバム『騙』のテーマである”嘘”の要素に着目していきたいと思う。


◇寅丸星の過去話

この項では、本楽曲の主人公たる『寅丸星』の過去についておさらいする。

まずは、キャラ設定とエキストラストーリー.txtのファイルの記述と本編中のセリフから話を整理して簡単にまとめる。

聖白蓮は妖術により若返り、若き僧となる。聖白蓮は寺に毘沙門天を招いたが、寺の周囲の妖怪が毘沙門天に怯えていることに気づく。聖白蓮は妖術の力の維持と妖怪を不憫に思う気持ちから、裏では妖怪の味方をしていることもあり、この状況を見過ごせなかった。

そこで、山で最も人格のある妖怪であった寅丸星を毘沙門天の代理として立てる妙案を実施し、毘沙門天はこれを黙認する。だが、完全に信用していたわけではなかった毘沙門天はナズーリンを監視役として派遣する。

しかし、聖白蓮の持つ魔界の力を畏れた人間達は聖を魔界へと封印、彼女に関わる物品と共に慕っていた妖怪達は地底へと埋められてしまう。

過去の話をまとめるとこんな感じだろうか。ここで着目したいのは、寅丸星は地底へ閉じ込められていたのか?という点である。

東方星蓮船本編中のセリフにはこうある。

我々も地底から目覚めた時には、既に破片は妖精達によって散り散りとなっていました。

―東方星蓮船5面(魔理沙B装備)寅丸星のセリフより引用

”我々”も、とあるため寅丸星も地底に居たのだろうか。もう一つ、東方星蓮船のエンディングにはこうある。

や一輪といった私達の仲間と、この聖輦船は、長い間地下世界に閉じ込められていました。

―東方星蓮船 Ending No.5 村紗のセリフより引用

寅丸星も長い間地底に閉じ込められていた、とある。毘沙門天の代理という、人間達にとってはありがたい存在であるはずであるが地底に閉じ込められている。人間達には妖怪であることは内緒だったはずが、毘沙門天から破門でも受けたのだろうか?ここでキャラ設定.txtへ戻ってみると、

白蓮がいなくなってから数百年経って、お寺は荒れに荒れた。
そんな彼女の元に、地底に封印された白蓮の仲間達が戻ってきたのである。

―東方星蓮船 キャラ設定とエキストラストーリー.txt 寅丸星の項より引用

仲間達は地底へと封印されていたが寅丸星は地上のお寺に居た、と読み取れる。

うん?

なんと、寅丸星が“地底へと封印されていた”という内容と“寺に居た”という内容の両方があるではないか。

オイオイ、このテキスト書いたやつは酔っぱらっていたのか?

この両方は寅丸星が二人いない限り成り立つものではない。東方星蓮船のストーリーを題材にした二次創作では、「寅丸星とナズーリンだけは毘沙門天側として地上に残り、他の妖怪達は地底へ封印された」、というパターンが多く採用されているようだ。(私調べ)

では、『Fragile Idol-Worship』はどちらを採用しているのか。

必死に。
救いを求める恩人の声に。
応えずに。
ただ佇む。
何もできず。
それが“不義”でなくて何であろうか!

毘沙門天代理という立場に縛られ、封印される恩人を前に佇む他何もできなかった。寅丸星は己の職務を突き通しお寺に残った、と解釈できる。

つまり、『Fragile Idol-Worship』はキャラ設定.txtより読み取れる「寅丸星は地上のお寺に残った」説を採用しているといえよう。


◇寅丸星と嘘

インレイと偽サイトにあるこの楽曲の偽タイトルには『ナズーリン、正義を無くしてしまいました』とある。二次創作において寅丸星は物(特に宝塔)を無くすキャラクターとされており、この二次設定要素が偽タイトルに込められているようだ。

そんなコミカルな偽タイトルとは裏腹に、『Fragile Idol-Worship』に含まれる嘘は”寅丸星の持つ性”、”恩人への良心”、”毘沙門天代理の立場”により構成される複雑かつシリアスな嘘となる。

私は毘沙門天の代理。聖の信仰を一身に受けていた者です。
ナズーリンが持ってきたこの宝塔と、貴方の持ってきた飛倉の破片が揃えば、ここの封印を解く事が出来ます。

聖への恩を返す事が出来るのです。

―東方星蓮船5面 寅丸星のセリフより引用

まず抑えておきたい点は、寅丸星にとって聖白蓮は信仰者かつ恩人となる点だ。

寅丸星は毘沙門天の代理であり、聖白蓮のお寺では本尊のような存在だ。つまり、聖白蓮にとって寅丸星は信仰を捧げる対象となる。しかし、寅丸星は聖白蓮への恩を抱いている。

キャラ設定.txtや本編では語られてはいない部分ではあるが、例えば寅丸星が人間達に退治されそうになっていたところを聖白蓮が助けた、といった過去があったのかもしれない。東方求聞口授では、「虎を知らない当時の人々のイメージから生まれた妖怪である寅丸星の存在が消えかかっていたところを毘沙門天代理として任命したために事なきを得た」と解釈できる聖白蓮のセリフがあるため、もしかしたらその点を恩としているのかもしれない。

妖怪と人間、違う種族でありながらお互いの人格を評価しており関係性は良好のように見える。

しかし、問題は聖白蓮が提案した寅丸星を毘沙門天の代理とする妙案だ。これが寅丸星の歪みの根源に当たると私は考えている。

白蓮が封印された時も特に取り乱したりはせず、毘沙門天としての業務をこなしていた。
人間には自分が妖怪である事は内緒だったのだ。
後悔の念もあれど、正体を明かす事は自殺行為に等しかった。

―東方星蓮船 キャラ設定とエキストラストーリー.txt 寅丸星の項より引用

そもそも当時の聖白蓮のお寺は人間のためのお寺であったようだ。人間達が仏に祈りを捧げるスタンダードなお寺であり、現在の幻想郷にある命蓮寺とはまた違ったものだ。

人間が祈りをささげる対象は、妖怪である寅丸星だ。しかも、その事実は人間達には内緒という事になっている。

聖白蓮のこの妙案こそが寅丸星にとっての”嘘の始まり”ではないだろうか。

寅丸星は山で最も人格があり「まともな」妖怪だった。真面目な彼女は恩人の頼みを断ることができず、妖怪であることを人間達に隠した上で、人間達の寄る辺となったのだろう。

それから、聖白蓮が封印された時に寅丸星がとった行動はどうだったか。

寅丸星の選んだ道は聖白蓮を慕う者としての道ではなく、人間達の寄る辺である毘沙門天としての道だった。人間達の信仰を守ったのか、または聖白蓮の寅丸だけは助かって欲しいという願いを尊重した結果なのか、真面目な彼女は恩人より与えられた立場を捨てきれなかったのか、その理由はハッキリとはしない。

なんにせよ、本当は聖白蓮を助けたかったのだろうが寅丸星は何もできなかった。彼女は自分の正義に嘘をついたのだ。

その後、お寺で毘沙門天の代理として業務を務め、聖白蓮を封印した愚かな人間達の信仰をその身に受け止める偶像となったわけだが、キャラ設定.txtには以下のようにある。

白蓮がいなくなってから数百年経って、お寺は荒れに荒れた

―東方星蓮船 キャラ設定とエキストラストーリー.txt 寅丸星の項より引用

このまま信仰が続いていたのならば、お寺が荒れることもなかったはずだ。

なぜお寺は荒れたのか。

その理由は”偶像信仰がかくも脆いもの”だったからなのだろう。

『Fragile Idol-Worship』の時系列は聖白蓮が封印されてまだ日が浅い(数年後~数十年程度?)時期と思われる。数百年の間に何があったのかは不明だが、嘘の笑顔で人間達を救うことはできなかった、ということなのかもしれない。


◇ブックレット

仏のごとく笑顔で佇む寅丸星、対称の位置に武神のごとく怒りを浮かべる寅丸星が佇む。

笑顔は聖白蓮へ、怒りは愚かな人間達へ向けた表情なのだろうか。そうなのだとすれば、この表情は嘘ではないとも思える。

ブックレットイラストは『綜纏Vol.2 二旅』に収録。はなだひょうさんによると四角い区切りはスペルカード『焦土曼荼羅』をイメージしているとのこと。

ちなみに、『綜纏Vol.2 二旅』では笑顔の寅丸星と怒りの寅丸星が分かれた状態で掲載されているため、ポーズの違いもしっかり確認できる。


◇雑記

歌詞中で語られる”正義”について。

一般的に”正義”とは、人の持つ倫理観または合理性を礎に築かれた正しさの概念を指す。その礎にはしばしば宗教も含まれる場合がある。

寅丸星がなぜ毘沙門天の代理となったのか。おそらく、その裏にある正義は釈迦の説法などではなく、聖白蓮への尊敬の念が礎になっているのだと思う。

彼女の正義は聖白蓮と共にあったからこそ聖白蓮を失ったことは正義の礎を無くすも同然、と私は考えた。

しかし、それから時が経ち、東方星蓮船 STAGE5。

”絶対的正義”アブソリュートジャスティスを掲げその符を叫ぶ。

聖白蓮を救うその行動が、無くしたはずの正義を取り戻したのか。聖白蓮を素晴らしい人と言い、聖白蓮を封印した人間達を愚かと言う、その発言に嘘偽りはないのだろう。

異変解決後、現代の命蓮寺では妖怪も人間もみな平等に信徒である。かつて聖白蓮を魔界に封印した種族”人間”を受け容れる事に対して寅丸星は何を思うのだろうか。

この点だけ少し疑念は残るがこれだけは言える。

寅丸星の正義が聖白蓮と共にある限り、宝塔から放たれし法の光は揺るがない。(へにょってるけどネ)

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