絶対的一方通行

見るな。来るな。知るな。渡るな。


Featured in: 廻
track: 9
arrangement: RD-Sounds
lyrics: RD-Sounds
vocals: めらみぽっぷ
original title1: 夜が降りてくる ~ Evening Star
original title2: ネクロファンタジア
length: 06:10


◇概要

幻想郷は全てを受け入れるのよ。
それはそれは残酷な話ですわ。

ー『東方萃夢想』八雲紫のセリフより引用

”旅行”をテーマとするアルバム『廻』に収録されたボーカルアレンジ。

後に『絶対的一方通行 ~ Unreachable Message』としてリアレンジされて、『改』に収録されている。

ブックレットには幻想郷の賢者である八雲紫と科学世紀を生きる秘封倶楽部の二人が登場している。違う世界・時代の存在が交差する時、秘封倶楽部に訪れる結末とは。

八雲紫主観で綴られる歌詞からは結界を暴こうとする秘封倶楽部へ向けた警告が読み取れる。ブックレット右手にある”通行止め”や”STOP”といった標識からも警告のメッセージが察せられる。

八雲紫の警告は一体何を意味するのだろうか、『絶対的一方通行』と他楽曲とのつながりといった点から、ふたたび考えていきたいと思う。


◇『絶対的一方通行』の位置付け

『廻』という物語において『絶対的一方通行』がどの位置にあたるのだろうか。
1曲目『A Secret Adventure』から始まり、『意にそぐわぬリターニー』または『ヒメゴトクラブ』で『廻』の物語は終わる。『絶対的一方通行』は『意にそぐわぬリターニー』のひとつ前、9曲目に位置している。『絶対的一方通行』は『意にそぐわぬリターニー』に続くと考えても良いだろう。

意にそぐわぬリターニー』というタイトルの意味から察するに秘封俱楽部の”旅行”の結末は満足のいくものではなかったのだろう。”リターニー”とは”returnee”、長期休暇からの帰還者または帰国子女などを指す単語となる。10曲目ではもうすでに秘封俱楽部の”旅行”は終わっていて、すでに”帰国”しているのだ。

つまり、『廻』の物語の終幕、秘封俱楽部の旅行が終わるきっかけを与えた。それこそがこの『絶対的一方通行』の位置付けといえるのではないだろうか。

では、『絶対的一方通行』の物語において、秘封俱楽部の二人の身に何が起こったのだろうか。

それはブックレットの右上の”離れる手”が物語っている。


◇『Unreachable Message』

『改』に収録された『絶対的一方通行 ~ Unreachable Message』。

アレンジの方向性としてはあらたに変質しつつも、歌詞自体に大きな変更はない。ただ、『辿/誘』収録の『Calling』を想起させるコーラス、バッドエンドを匂わせる『プレイヤーズスコア』のアレンジなど、さまざまな追加要素があるため、『絶対的一方通行』の世界は大きく広がったといえよう。

この節ではサブタイトル、”Unreachable Message”について述べていきたい。

直訳すると”届かないメッセージ”を指す言葉であり、ネットワーク通信業界ではパケットの到達不可能を示すログと捉えられる。

『絶対的一方通行』の一人称が八雲紫であるならば、やはりサブタイトルが指すものはひとつ。それは概要で述べた警告のメッセージだろう。

八雲紫の警告が秘封俱楽部の二人へ届かなかった理由はおそらく歌詞中の”非可逆世紀”という単語にある。

科学世紀から幻想郷に行く事は可能でも、幻想郷から科学世紀へ戻ることは不可能。境界を超える者にとって、幻想郷と科学世紀は元に戻れないという点で非可逆の関係と言える。

この両世界を隔てる”絶対的なとおりゃんせ”は八雲紫でさえ克服できない概念なのだとすれば、秘封倶楽部へ向けた警告のメッセージが届かないのも頷ける。

八雲紫の警告が届かなかったのならば、秘封倶楽部の別れは必然。

その一歩を踏み出せば科学世紀に戻ることも叶わなず。

すべては遅すぎたのだ。


◇つづく物語・つながる楽曲

もし『絶対的一方通行』の物語につづきがあったのだとしたら。

もし楽曲の世界がつながっているのだとしたら。

凋叶棕では楽曲同士に淡いつながりがあるを感じさせる要素が、楽曲の中に組み込まれている場合がある。そういった共通の要素を持つ楽曲を合わせて聴くことで凋叶棕ワールドをより深めることができるだろう。

▼rebellion -たいせつなもののために-

『騙』収録。曲の内容は、”メリー”が存在した事の認識を書き換えられてしまったかのように全て忘れてしまっていた蓮子が、違和感に気づき、メリーを思い出し、仇なす幻想へ立ち向かうと決めた、というもの。

偽特設サイトやインレイには『それからのわたしたち』という偽タイトルが付けられ、トラックナンバー11に取り消し線をされて7に修正されている。まるでそこに至るまでの過程があったかのような偽タイトルである。また、『意にそぐわぬリターニー』がトラックナンバー10なので、その続きがトラックナンバー11『それからのわたしたち』だったとするならば、『絶対的一方通行』の物語がこの楽曲へ続いているようにも思える。

ヒメゴトクラブと酷似するイントロも一連のつながりを感じさせる要因にもなっているのだろう。

▼The beautiful world

『辿/誘』収録。幻想の世界の美しさに魅入られてしまった/魅入ってしまったメリーが科学世紀ではなくこの美しい世界と生きることを決めた、というもの。それはまるでメリーが八雲紫へ変質していく様子を表しているかのよう。

『絶対的一方通行』に登場する”美しいと思ってしまったから囚われたのだ”という歌詞を鑑みると、どうやら『The beautiful world』との関係性もありそうだ。『改』版の歌詞では、”私も、もはや”という歌詞が付け足されているなど、どこか八雲紫の後悔を感じさせる表現に置き換わっている。

楽曲同士が繋がった共通の世界であるならば、その世界では”八雲紫≒メリー”説を採用している、ということなのだろう。つまり、『絶対的一方通行』における八雲紫の警告は、過去の自分へ送られたメッセージだと捉えられる。

▼ヒメゴトクラブ

『廻』収録。

トラックナンバーはEX。本記事でここまで語ってきた一連の悪夢から醒めたかのように甘美かつ官能的な楽曲となる。

『絶対的一方通行』を皮切りに起こった出来事はすべて夢だったのだろうか?

それとも『ヒメゴトクラブ』の世界が夢なのだろうか?

世界観としては、ある種の”パラレル的なつながり”があるようだ。

この節で語られた内容はすべて”if”である。これらが公式的な見解ではないということをここに宣言しておこうと思う。


◇ブックレット

左側の写真は神社の階段を登る秘封倶楽部、右側の写真は左側の秘封倶楽部の写真が大きく破られ、その破られた隙間から八雲紫が怪しく笑う。

ブックレット上部・下部には、写真が左から右に時間遷移するかのようにその後に起こる悲劇を示唆しているのだろうか。

”来るな”と言わんばかりの標識の数々を携え、秘封俱楽部への警告を発しているにも関わらず、八雲紫の表情が邪悪である。さすがは”うさんくさい”妖怪の賢者と言ったところだろうか。

うってかわって『改』のブックレットでは、悲しげに座る八雲紫に抱かれるメリーを象ったスタチューが添えられている。楽曲が『辿/誘』も意識されているためか、背景には辿誘に使用された紫の模様、台座には赤い糸があしらわれている。

そして、スタチューの傍には赤い靴が転がっている。

この赤い靴は『廻』と『辿』のジャケット、『密』のインレイのメリーも履いている。それに加え、『廻』ジャケット裏と『誘』ジャケットの八雲紫も同様に赤い靴を履いており、まるで”八雲紫≒メリー”の要素をフォローしているかのよう。

ちなみに赤い靴を履いたメリーは『大空魔術』のジャケットで見ることができる。

ブックレットイラストは『改』版も含め『綜纏Vol.2 二旅』収録。『辿/誘』のブックレットイラストについても同様に収録されているため、凋叶棕ワールドの秘封倶楽部が気に入ったならば手に入れることをオススメする。


◇雑記

この記事では、『廻』で最初に出来上がった楽曲であるらしい『絶対的一方通行』を再考した。

秘封俱楽部を取り巻く『廻』る物語。

そんな全貌の見えない大きな物語の根幹と言っても過言ではないほどに、数多の要素が散りばめられた重要な楽曲といえよう。

正直なところ、この記事では書く内容をある程度絞っているのだ。この楽曲について、すべてを書こうと思うと、どうしても『廻』全体の考察がどうしても必要になり、また他のアルバムにも事が波及していくため、どうにもこうにも御しがたい、というわけである。

”服装について”だとか、”時計について”だとか、もっと書く事柄があるのだが、未来に書く予定の記事もあるため『絶対的一方通行』についてはここで”通行止”としたい。

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