Featured in: 喩
track: 4
arrangement: RD-Sounds
lyrics: RD-Sounds
vocals: めらみぽっぷ/nayuta
original title: 向こう側の月
length: 07:00
◇概要
『喩』収録の秘封俱楽部を題材にしたボーカル楽曲。
アップテンポな曲調、歌詞から読み取れる”秘封俱楽部としての王道さ”から、ファンの間では”二期オープニング”とも呼ばれることもある。
しかし、『喩』のテーマは「もしもの世界」である。
いつもと違う世界の秘封俱楽部なのだ。
どこがいつもと違うのか、『喩』におけるこの楽曲の位置づけとは、という部分から述べていきたいと思う。
◇秘封俱楽部のif
Q2.宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンは幻想郷の外の世界で秘封倶楽部を結成し活動している。
はい/いいえ
『喩』の公式サイトが初めて公開された夏、いつもと違う謎のクイズサイトにファンは驚かされたことだろう。上記の引用は『silent disorder』および『true outsiders』に対応するクイズである。
このクイズは「いいえ」を選択することで次のQ3.htmlへ進むことができ、「はい」は青色下線のフォントでありハイパーリンクではない。つまり、文章を否定することで喩の世界へ辿り着くことが出来るのだ。
しかし、文章のどこを否定するのか。予想されるのは以下の3パターン。
①.”幻想郷の外の世界”を否定
:幻想郷の中で、秘封倶楽部を結成している
②.”秘封倶楽部を結成”を否定
:幻想郷の外の世界で、秘封倶楽部を結成していない
③.上記①と②の両方を否定
:幻想郷の中で、秘封倶楽部を結成していない
まず、①の「幻想郷の中」を示唆する判断材料はあるのだろうか。
一つ目の材料として、着目したいのはブックレットの蓮子とメリーの服装だ。特に下半身の袴らしき衣は科学世紀というよりは幻想郷の世界観に沿った服装である。
また、現実の世界が描かれた『喩』のジャケットには、蓮子とメリーの姿がない。逆に、『喩』で現実を舞台にしている楽曲に登場する早苗、にとり、霧島理沙などのキャラクターはジャケットに描かれている。これも材料になるだろう。
もう一つの材料は歌詞に示される”目指す先”。
「この幻想を」「踏み越えた先に」
「夢から現に」「抜け出たその先に」
―『true outsiders』の歌詞より引用
そう、夢から現を抜け、幻想を踏み越えた先にそれはあるのだ。幻想でも夢でもなくその先、目指す先は幻想でも夢でもない場所、”向こう側の月”ということだろうか。秘封俱楽部は幻想側の存在であり、現の先を目指している、と捉えることができる。
よって、蓮メリの服装、『喩』のジャケット、歌詞の3点の判断材料により、上で挙げた②の説は除外できるだろう。
―
次に、秘封俱楽部を結成しているか否かを判断する。
・・・・・・ふむ、歌詞には”秘封俱楽部”という単語は出てきていない。
そもそも”秘封俱楽部”とはなんなのか。広義の”秘封俱楽部”として、『密』収録のある楽曲より概念を借りて、『暴き尽すもの』と仮定するならば・・・
知らない世界があるなら
それを見ずには名乗れない
秘されたる全てを暴き尽くすのだ―『true outsiders』の歌詞より引用
”秘封俱楽部”を名乗る、ということだろうか。
私は上で列挙した①の「幻想郷の中で、秘封倶楽部を結成している」説を推したいと思う。
◇向こう側の月
この楽曲の秘封俱楽部が目指す先は”向こう側の月”である。
では、”向こう側の月”とは何を指すのだろうか。メリーの能力を介して見える場所と考えるならば結界の先のどこかのはず。
まずは原作をソースとして考えていく。
魔術師メリーには見えていた。
兎が薬を搗き
煌びやかな衣装を身に纏い
優雅に空を舞う天女
水に映った月には結界の向こう側の姿が見えていた。―『大空魔術 ~ Magical Astronomy』より引用
『向こう側の月』が収録されている『大空魔術 ~ Magical Astronomy』においては、”月の都”を指しているようだ。
たとえ幻想郷の中であっても、メリーの能力により結界を通して月の都を幻視ることは不可能ではないだろう。幻想郷の人間にとって、月の都はそう簡単に至ることができる場所ではないはず。
幻想の住人が見る更に先の幻想。それが”月の都”ということだろうか。
まずは一つの仮説として、”向こう側の月”=”月の都”がある。
しかし、”向こう側の月”という単語がそのまま月を指す単語ではなく、何かに対する比喩とも思える。『喩』というアルバムに含まれる”現実”という要素がどうにも引っかかるのだ。
現実。
現の世界。
夢から現に
抜け出たその先。
その先。
・・・もしかして宇宙なのか?(飛躍しすぎ)
―
”向こう側の月”とは、博麗大結界の先、現実の世界。
または、”誰もまだ知らぬ”、宇宙とも考えられるだろうか・・・?
―
考える過程でなぜか以下の図を作っていた。
うろ覚えの原作設定からひねり出したのであまり正確な資料ではない。
◇ブックレット
半分の満月、手を取り夜を躍動する蓮子とメリー。
その服装は和風のようで洋風のようでもある、まるで幻想郷の住人のよう。
歌詞はブックレットを縦にして読むのだが、絵はブックレットを横にすると重力が合う。
『綜纏vol4 四百四描』に収録されている。はなだひょうさんの解説によれば、背景の木々には『辿/誘』で使用されたテスクチャが使用されているとのこと。
二人は”向こう側の月”に誘われている?
いや、もうすでに辿っているのかもしれない。
◇雑記
今では鉄板コンビとなっているめらみぽっぷさんとnayutaさんの記念すべき初のツインボーカル作品となる。当時の私は『true outsiders』のラスサビのハモリに二人の可能性を淡く感じていた。
二人の能力と歌詞の「向こう側」/「月」より、nayutaさんが蓮子、いつも通りめらみぽっぷさんがメリーという配役なのだろうか。
喩合同『たとえそらごと』に『true outsiders』を題材にした三次創作作品が収録されている。作者は心葉御影さん。『true outsiders』だけでなく『喩』というアルバム全体に鋭い切り込みを入れるような展開には大変心服させられた。
『喩』というアルバムにおいて、終わりと始まりの特別な4曲を除き、
なぜ”秘封俱楽部”が先陣を切ったのか。
その後に続く”現実”故の悲と憂。
”秘封俱楽部”の原罪とは。
―
もしかすると『true outsiders』の二人は『喩』世界にとっての”アダムとイブ”なのかもしれない。蓮子とメリーの結界暴きによって『喩』世界が顕現したとするのであれば。