Featured in: 奉
track: 4
arrangement: RD-Sounds
lyrics: RD-Sounds
vocals: めらみぽっぷ
original title1: 月見草
original title2: 竹取飛翔 ~ Lunatic Princess
length: 06:47
◇概要
「ゲームとしての東方」をテーマに製作された『奉』の永夜抄枠。タイトルの ”Imperishable Challengers” は歌詞中にも登場する『不滅の挑戦者たち』を指す。
原作STG『東方永夜抄 ~ Imperishable Night.』で起こった『永夜異変』を解決すべく動く主人公達を中心に、登場するボスキャラクター達のモチーフも歌詞に散りばめられ、ストーリー、キャラクター、音楽、ゲームシステムなどなど、ゲームの要素を凝縮した楽曲となっている。
◇『永夜異変』のおさらい
まずは『東方永夜抄 ~ Imperishable Night.』がどのようなストーリーでどのようなゲームシステムであったかをおさらいしたい。若干、私的な解釈を含むので公式ページのストーリーも合わせて読んでおくと補完できるかもしれない。
「永夜異変」とはその名の通り、永遠の夜。夜が明けない現象を指す。
実際は絶対に明けない夜だったわけではなく、「刻符」の力により時間の経過を遅らせていたにすぎない。夜に寝て起きたけどまだ暗かったというよくある現象、夏から秋へ季節が変化する過程で日照時間が短くなり夜が長く感じるような現象に近い。つまり、秋の夜長が少し長くなった程度の平和な異変である。しかし、これはあくまで人間目線の認識である。
妖怪の目線では、月が偽物にすり替えられたという異変であり、月に影響の受けやすい妖怪にとっては大問題であった。『東方文花帖 ~ Bohemian Archive in Japanese Red.』の第百十九季の文々。新聞には、「永夜異変」について「近年稀に見る大異変に緊張が走る」と見出しがあり、妖怪の身である射命丸文の反応から察するに妖怪にとっては決して平和ではない異変と言える。月の異変により妖怪に影響が出ると、人間と妖怪のパワーバランスが崩れることに繋がり、放っておけば妖怪だけでなく幻想郷全体に多大な被害が出る大異変となっていたことだろう。
この偽りの月の異変、実は迷いの竹林にあるという永遠亭に住む者により引き起こされたのだった。ある日、永遠亭に住む 月兎である鈴仙は「次の満月の夜に迎えに行く」という内容の月からのメッセージを受け取る。しかし、輝夜の過去のこともあり、永遠亭として月との接触を避けたかった。
そこで、永琳は月と幻想郷の往来を遮る策を思いつく。その策は本物の満月を偽りの月へすり替えることで、地上を密室の箱庭にするというものだった。
しかし、前述の通り、月が偽物にすり替えられることは幻想郷に住む妖怪にとって大きな問題であったため、たとえ”夜を止めて”でもこの異変を解決しなければならなかった。これが永夜異変の真相である。
◇ゲームシステムのおさらい
ゲームシステムについて。自機は人間と妖怪のタッグの人妖2人組であり、高速移動時には人間側、低速移動時には妖怪側のキャラクターを操作するようになっている。人間は使い魔を破壊することができ、妖怪は使い魔をすり抜けて使い魔の主人を直接攻撃できるなど、人妖の性質の違いをうまく利用することでゲームが進めやすくなる。
このゲームには時間の概念があり、子の刻PM 11:00からゲームが開始され、卯の刻AM 5:00までに異変を解決できなければBad Endingという、要するに6時間の時間制限付きのゲームとなっている。夜が明ける前に異変解決するべく”さあ急げ”というわけである。
これに対して、自機は敵を倒し、アイテム『刻符』を集めることで時間の経過を遅らせることができ、最大で1ステージの経過時間を30分に抑えることができるが、クリアランクが低い場合やコンテニューをした場合にはより時間が加算されてしまうのだ。
また、このゲームの最大の特徴はラスボスが2人おり、ルート分岐するという点である。必ず初回クリア時はNormal Endingとなり、もう一度挑戦しノーコンティニュークリアをすることでようやくGood Endingを迎えることができる周回を前提としたものとなっている。
原作のおさらいは以上。ここからは歌詞とブックレットに着目していく。
◇Ending No.1~12
『永夜異変』のBad、Normal、Goodの3種×4組の合計12種類のEndingがある。この楽曲のアレンジ元はEnding曲『月見草』ということもあり、『東方永夜抄 ~ Imperishable Night.』のEnding内容はこの楽曲を語る上で押さえておきたい要素である。
そして昇りゆく日の光に、「一回休み」を知っては。
満身創痍の体を抱え、明ける空の下眠りゆく。―『永夜 「Imperishable Challengers」』の歌詞より引用
この楽曲はゲームオーバーから始まる。「一回休み」という表記は下の画像の魔理沙のセリフからだろうか。2コーラス目の歌詞では霊夢側のセリフ「光る竹の一つ」がピックアップされているようだ。ちなみに2つのセリフは、『stage4 uncanny 伝説の夢の国』にて確認することができる。自機は「禁呪の詠唱チーム」を選ぼう。

歌詞の続き、1コーラス目には「幻想の結界チーム」と「禁呪の詠唱チーム」、2コーラス目には「夢幻の紅魔チーム」と「幽冥の住人チーム」に、4組の自機それぞれのBad Endingの結末が描写されている。Bad Endingの条件は時間経過によりAM 5:00になるか、もしくはstage6Bで残機がなくなるかの2つ。その内容は、もう一度原作をプレイしてEndingを見るのも一興なので割愛。
偽りの箱庭を、壊しては、
もう一つの結末へ―『永夜 「Imperishable Challengers」』の歌詞より引用
この楽曲はBad Endingだけ描写されているわけでなく、Normal Endingの存在も歌詞に含まれている。初回、もしくは6Bルートを選択した場合の6面『Final 姫を隠す夜空の珠』をクリアするとNormal Endingとなる。このNormal Endingでは本物の満月は戻っておらず、真相も分からない状態であまりすっきりとした終わり方ではない。異変の真相を知るにはもう一度夜を超える必要がある。
Good Ending、本当の夜明けは楽曲の最後にて、ブックレットの左端へ続く。
◇ブックレット
ブックレットの歌詞のフォントはDynaFontの『DF郭泰碑 Std W4』といい、『東方永夜抄 ~ Imperishable Night.』のタイトル文字などに使用されているフォントと同じものである。ちなみに、『蓮台野夜行』や『鳥船遺跡』のジャケットタイトルにも同じフォントが使用されている。
ページ見開きのブックレットには、八雲藍、橙、パチュリーを除く、『東方永夜抄 ~ Imperishable Night.』に登場するほとんどのキャラクター達が描かれている。大きく描かれている自機組の人間4人は、霊夢のリボン、咲夜の懐中時計などに注目すればわかる通り、原作の絵に忠実なデザインとなっている。魔理沙のほっぺの絆創膏はオリジナルなのだろうか?
人間側の4人の色は自機セレクト画面『人と妖怪の選択の刻』(以下画像参照)で確認できる人間側の文字の色に対応しており、また自機の周りに漂うモヤ(妖気?)の色は妖怪側の文字に対応しているように見える。

霊夢にはスキマ、魔理沙には人形、咲夜には蝙蝠の羽、妖夢には扇子といったように自機の4人の傍らにはそれぞれの相棒の記号が。そして、肝試し慧音、通称”きもけーね”の姿以外、ボスキャラクター達もすべて描かれている。えっ妹紅?左下の隅に見覚えのあるリボンが・・・。
『綜纏Vol.3 三怪奇』のはなだひょうさんのコメントによると、縦に分割された構造は月の満ち欠けやルート分岐を表現しているとのこと。この分割された空間によって、月や空の色が微妙に違っている。ブックレットの右端の空は真っ暗、左端の空は明るい、といったように歌詞の進行に合わせて夜が明けているようにも見える。慧音のいる空間には月がないのは、描かれている慧音が白沢形態ではないからだろうか。
◇雑記
本記事で歌詞についてあまり触れなかった理由は、この楽曲が”永夜抄の塊”すぎるので歌詞の一文一文を語っていくことになるからである。どこを切っても永夜抄。それに尽きる。この楽曲の疾走感は目まぐるしく流れる竹林の背景を思い出す。なんだかとても懐かしい気分になる。久しぶりにプレイしたくなる。結果、私の土日が永夜に消えた。
幾度も夜を止めては
夜明けに涙を呑んだ
全ての「永夜の報い」を受けよと、今、不滅の挑戦者達―『永夜 「Imperishable Challengers」』の歌詞より引用
永夜抄を初めてプレイしたとき、レミ咲を使っていて4面の霊夢に残機0にされたことを今でも覚えている。なんとかNormal Endingを見れたが、次はノーコンテニューでもう一周と言われ、何度もプレイしてるうちにレミリアのショットの強さに気付き、割と楽にGood Endingが見られるようになったのもいい思い出だ。
メタな話、ゲームにはプレイヤー毎に、プレイした回数分だけ、異なった複数の歴史がある。ブックレットで分割された空間は8人の主人公達の歴史であり、どこかのプレイヤーが見た夢でもあるのかもしれない。